満足度やロイヤリティー、紹介率を高めるために欠かせないのが、スムーズな顧客体験(CX)の提供です。ただし、カスタマージャーニーに沿ったあらゆるタッチポイントでスムーズさ、あるいは摩擦を測定しない限り、顧客体験を体系的に改善することはできません。
カスタマー エフォート スコア(CES)は、顧客が会社とやり取りする際、または製品を使用して何らかのタスクを実行する際にどれだけの労力(手間)が必要かを総体的に表した指標です。CESは、製品・サービス・サイトとのやり取りのしやすさを明確なインサイトとして表します。タスクの完了が簡単であるほど、また、顧客が感じる摩擦が少ないほど、顧客の満足度が高まります。
SurveyMonkeyによる調査では、エフォートレスな体験、つまり良好な体験をした消費者の91%に、その会社を薦める意思があることがわかっています。したがって、CESスコアを改善すれば、顧客満足度や顧客ロイヤリティーが向上するだけでなく、口コミマーケティングの促進にもつながります。
顧客体験プロセスの異なる段階でCESアンケートを実施すれば、カスタマージャーニーをモニタリングし、インサイトを利用して顧客体験を強化することができます。それにより、摩擦の生じやすいプロセスを継続的に最適化し、カスタマーエフォートによるロイヤリティーの悪化を防ぐことができます。
標準的なCESアンケートは、カスタマーエフォートについて聞くCES質問1つと、そのフォローアップ質問で構成されます。フォローアップ質問では、CES質問に関連する、スコアには表れない背景情報を集めることができます。CESアンケート質問には、つぎのようなものがあります。
質問1: 「次の文にどの程度同意しますか。」[会社名]のおかげで問題が簡単に解決できた。
質問2: 「問題の解決を簡単にするにはどうすればよいですか。」
質問3: 「[会社名]に対する満足度を総合的に評価してください。」
Corporate Executive Board(CEB)というコンサルティング会社の研究者チームが初めてカスタマー エフォート スコアを提案したのは2010年のことです。CESは、顧客に求められる労力(負担)の量が顧客の満足度やロイヤリティー、維持率に大きく影響するという考えに基づいて開発されました。
CEBの研究者チームは、顧客ロイヤリティーを高める最も効果的な方法は、顧客の期待を超えることではないと考えました。それよりも、会社との取引において摩擦のないやり取りを繰り返し体験できることが、ロイヤリティーを高めると考えたのです。
会社との連絡のために別のチャネルに切り替える必要があったり、同じ情報を何度も聞かれたり、担当者間でたらい回しにされたりすると、顧客に強いられる労力が増え、カスタマー サービス プロセスに摩擦が生じます。SurveyMonkeyの最近の調査では、消費者の3分の1(35%)が、会社とのやり取りの中で別の担当者に回されることを上位3つの不満に挙げています。
会社とのやり取りで摩擦を繰り返し体験した顧客は、会社に対して否定的なイメージを持つため、顧客離脱の可能性が高まります。
このような事実に応えて開発されたカスタマー エフォート スコアは、どのタッチポイントで合理化が必要かを特定するのに役立ちます。
カスタマー エフォート スコアのメリットの1つは、ほぼすべてのタッチポイントで調べられる点です。CES質問を少しアレンジするだけで、ビジネスの各種プロセスに関するインサイトが収集できるようになります。
CES質問の例をいくつかご紹介しましょう。
今日、カスタマーサービスをご利用いただいた際の問題解決のしやすさを評価してください。
次の文にどの程度同意しますか。{会社}のチェックアウト画面では製品の購入がしやすい。
当社ソフトウェアのオンボーディングのしやすさを総合的に評価してください。
必要な情報を入手するのは簡単でしたか、大変でしたか。
どの質問でも、カスタマー エフォート スコアの計算に使えるデータが得られます。アンケートで使用する尺度(通常は5~7段階)は、質問の内容や目標に応じて選択します。それぞれの質問は、カスタマーサポートとのやり取りやチェックアウト手続き、オンボーディング、Webサイトでのナビゲーションなど、顧客体験の異なる部分に焦点を当てています。
カスタマー エフォート スコアは、顧客からすばやくフィードバックをもらうのに最適な手段です。会社とのやり取りから1ヶ月後に質問しても、顧客がやり取りの詳細を覚えていなかったり、思い出すのが面倒だったりして、高い回答率は期待できません。
カスタマー エフォート スコアを使用するタイミング:
CESの計算は、すこぶる簡単です。CESを計算するには、全回答のスコアを集計し、回答の総数で割ります。
たとえば、CESアンケートに100人が回答したとしましょう。回答の選択肢は1~7の7段階で、全回答の値の総計は450です。450を100で割った4.5が最終的なCESとなります。つまり、平均CESは1~7の7段階で4.5です。
カスタマー エフォート スコアの測定方法がわかったところで、何点なら良いのか、平均的なのか、悪いのかを見てみましょう。
Net Promoter® Score(NPS®)アンケートとは異なり、カスタマー エフォート スコアには画一的な標準ベンチマークがありません。なぜなら、回答に使用される尺度が会社によって異なるからです。
たとえば
一般的なガイドラインとして、尺度の上位20%を目指すことが推奨されます。1~7の7段階であれば、5.6以上が良いCESです。
CESを長期的に追跡し、業界標準とのベンチマーク比較を行えば、顧客満足度や注意の必要な領域について貴重なインサイトを得ることができます。
カスタマー エフォート スコアは、顧客が会社とのやり取りにどれほどの労力を費やしているかを数値化したものです。
CESを長期的にモニタリングして、顧客体験を合理化するような対策を講じれば、ブランドに対する顧客の不満が小さくなります。
不満が小さくなれば、次のような結果につながります。
CESのこれらのメリットを詳しく見てみましょう。
顧客体験(CX)は、会社に対する全体的な満足度を形成するもので、それが直接顧客ロイヤリティーにつながります。カスタマー エフォート スコアから得たインサイトを使えば、障壁を取り去り、摩擦のないカスタマージャーニーを構築して顧客を満足させることができます。
CESを中心とした頑健なカスタマー フィードバック プログラムを実施することで、ビジネスを左右する改善の指針となるようなインサイトが得られます。
CESをお客様の声(VoC)プログラムに含めると、フィードバックループが組み込まれ、サポート解決の加速化とプロセスの最適化に役立ちます。
満足度の高い顧客は、再購入し、契約を更新し、知人に推薦してくれます。逆に、忍耐を強いられ、不満を抱えた顧客は、ブランドを離れていきます。
摩擦のないカスタマージャーニーを通じて信頼を積み重ねていくことで、初めて顧客維持が可能になります。
最近の調査によると、ブランドを信頼している消費者の59%に、そのブランドが発売する新製品を購入する意思があり、67%がブランドを他の人に勧める意思があると答えています。
問題点に対処し、プロセスを顧客にやさしいものにすれば、長期的に取引関係を継続してもらえるような環境が確立されます。
CESからのインサイトを予見的に利用して、最初から不要な負担が生じないようにすることで、顧客の離脱を後から修正する多大な労力が省け、顧客の信頼と維持を実現できます。
ブランドが気に入った顧客は、強力なサポーターとなって、会社の商品・サービスをリピート購入してくれたり、家族や友人に薦めてくれたりする可能性が高いです。
あらゆるマーケティング形態の中でも、消費者の最も多くが、知人からの推薦を信頼しています。これは、特に知名度の低い企業に当てはまります。
顧客が抱える問題を迅速に解決すれば、ブランドロイヤリティーを確立し、口コミでの推薦につなげることができます。
企業は、CESを活用して改善の機会を見つける必要があります。それぞれのタッチポイントを少しずつ改善することで、優れたカスタマーサービスや最高の顧客体験の提供が可能になります。
CES指標を利用するときは、次のような手順を踏みます。
効果的なCESアンケートを作成するには、カスタマージャーニーに存在する問題点を特定しなければなりません。最大の目標は、顧客と会社のやり取りを効率化することです。それには、顧客との接点がどこにあるかを理解する必要があります。
接点が特定できたら、アンケートの明確な目標を立てます。たとえば、各顧客タッチポイントの最中または後でCESを調べてその背景を評価し、今後の改善につなげる、などです。
たとえば次の通りです。
続いて、次のようなフォローアップ質問をします。
アンケートを送信する段階になったら、選択肢がいくつかあります。アンケートへのリンクをカスタマーサポートやカスタマーサクセス担当者から顧客に提供してもらう、複数の顧客にメールで一斉送信する、Webサイトに埋め込むといった方法です。
アンケートは、短く簡潔なものにしましょう。あまり質問の数が多いと、顧客が回答せずにアンケートを終了してしまう可能性があります。そこで効果が絶大なのが、SurveyMonkeyの専門家が作成した2つのCES質問です。カスタマー エフォート スコア アンケート テンプレートでご確認ください。
顧客管理プロセスのどの時点で顧客スコアを測定すべきか、迷っている方もいるでしょう。ベストプラクティスは、1回きりではなく、カスタマージャーニー全体で頻繁に測定することです。
スムーズな顧客体験に妨げる障壁を特定する最適な方法は、エンゲージメントのさまざまなポイントでカスタマーエフォート質問をすることです。これらのイベントが生じた直後にカスタマーエフォート質問をするようにして、すばやく実用的なフィードバックを入手しましょう。
CESのモニタリングに適したタッチポイントには、次のようなものがあります。
このようなポイントで実施すると、会社がカスタマージャーニーの各段階において顧客をどのようにサポートしているかが総合的に理解できます。
CESの用途の中で最も重要なのが、顧客対応プロセスの改善です。まずスコアの低いものに注目し、その説明を注意深く読んでいきます。同じ問題点が何度も言及されている場合、それは改善・変更の明確な目標になります。
このような戦略を取ると、会社とのネガティブな体験を修正し、CESスコアを向上させることができます。
関連トピック: 顧客フィードバックプログラムを実施するための究極ガイド
顧客フィードバックを利用すると、カスタマー サービス チームのパフォーマンスが低い分野を特定できます。
たとえば、企業に多く寄せられる苦情に、カスタマーサポートに問題を報告してから解決までに時間がかかった、というものがあります。これを改善するには、カスタマー サービス チーム向けの研修モジュールを増やし、担当者のスキルを改善して、より迅速に解決策を見いだせるようにします。
もう1つ、カスタマー サービス チームに応答時間の制限を設ける方法もあります。これがきっかけとなって、担当者の数を増やして応答時間を短縮しなければならない場合もあります。
カスタマージャーニー全体を通じてカスタマー エフォート スコア アンケートを定期的に実施し、タッチポイントの最適化に役立つ実用的なCESデータを常に入手できるようにしましょう。そうすれば、時間をかけて段階的にプロセスを強化することができます。
会社がCESのインサイトに従って継続的な改善を行うようになると、CESの数値が改善され始めます。CESの改善と並行して、前述したような顧客満足度の向上、顧客離脱率の低下というメリットも見られるようになります。
CESは、顧客とのやり取りに関して重要なインサイトを提供してくれますが、他にも注目すべき指標が2つあります。Net Promoter Score(NPS)と顧客満足度スコア(CSAT)です。この2つは、互いに異なるものの、補完的な役割を果たします。
各顧客体験指標は、それぞれ次のようなものを測定します。
どの場面でどの指標を使って顧客体験を測定すべきかを見てみましょう。
先ほど触れましたが、CESは、カスタマーエフォートを測定する指標です。問題の解決、製品の購入、会社への連絡といった手続きが顧客にとってどの程度簡単(あるいは困難)かを示します。CESは、カスタマーエフォートを最小限に抑え、顧客の満足度を高めることに焦点を当てます。
Net Promoter Scoreは、ブランドに対する顧客ロイヤリティーを表します。この指標を計算するには、ブランド・製品・サービスを他の人に薦める可能性について顧客に質問します。
NPSは、ブランドに忠実な支持者と競合他社に乗り換えてしまいそうな顧客を区別するのにも役立ちます。
関連トピック: NPSアンケートを使って顧客満足度を最大限に高める方法
CSATは、会社・やり取り・製品・サービスに対する顧客の総合的な評価を調べた、顧客満足度の指標です。
カスタマージャーニーにある個々のタッチポイントの評価・改善に役立ちます。1つのタッチポイントに絞って評価し、進歩をモニタリングすると、CSATを最大限に活かすことができます。
関連トピック: 顧客満足度スコアの究極ガイド.
カスタマー エフォート スコアをただ測定するだけで行動を起こさないのでは、あまり価値がありません。変革をもたらすには、カスタマージャーニーの問題点を評価する段階と、問題に対処してプロセスを改善する段階をつなぎ、ループを閉じる必要があります。
大切なのは、CESを業務に組み込み、顧客フィードバックの収集・分析を定期的に行うことです。そうして初めて、変更の実施や顧客体験の最適化を、最も必要な時に実施できるようになります。
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NPS、Net Promoter、および Net Promoter Score は Satmetrix Systems, Inc.、Bain & Company、Fred Reichheld の登録商標です。
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