人口1億2000万人を超える日本で正確な全国調査を実施しようと思ったら、一体どうすればよいのでしょうか。赤ちゃんから高齢者まで、すべての人にアンケートを送ることなど現実的ではありません。そこで登場するのが「確率的サンプリング」です。たとえ集める回答数がずっと少なくても、同じように役立つデータを集めることができる便利な方法です。
確率的サンプリング(確率抽出法)とは、大きな母集団から小さなグループ(サンプル・標本)を無作為に選ぶ方法のことで、そのサンプルの回答をすべて合わせた結果から、母集団全体の回答を推定するサンプリング手法です。
確率的サンプリングには重要な条件が2つあります。
この2つのルールに従うと、母集団で抽出可能な全員のリストである「サンプリングフレーム」から、適切(すなわち無作為)にサンプルを選択できます。選択が無作為に行われることは非常に重要です。確率的サンプリングは、すべての人の選ばれる確率を均等にしなければ意味がないからです。これによって、無作為にする方法は単純なくじ引きであれ、もっと複雑な無作為選択のシステムであれ、最終的に母集団全体を代表するサンプルができあがります。
適切なサンプルが手に入れば、大規模なアンケートを実施するのと同じように価値のある結果を得ることができます。そのサンプルの希望やニーズ、意見に基づいて有効な結論を導き出し、母集団全体に対して理にかなった行動を起こすための最初の一歩になります。
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確率的サンプリングに分類される抽出方法はいくつかあります。これらの方法は、実施する調査の種類や引き出すデータの種類だけでなく、調査にかけられる時間や選択できるツールによっても異なります。その中でも、調査者が使用する主な確率的サンプリング手法を4つご紹介します。
単純無作為サンプリングでは、母集団の各人に選択される可能性が等しく与えられ、選択が無作為に行われます。この目的で、調査者は乱数生成器のようなツールを使って、母集団全体からサンプルとなる参加者を選択することができます。単純無作為サンプリングはその名が示すとおり最も単純な抽出法ですが、バイアスがかかりやすいという欠点があります。たとえば、母集団に比べてサンプルサイズが小さければ小さいほど、完全に無作為な、信頼できるサンプルを抽出できる可能性は低くなります。
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母集団の多くは、ある決まった特徴に基づいて小さなグループに分けることができます。この小グループは重複せず、すべて合わせると母集団全体を構成するようなものです。層化無作為サンプリング(層化抽出法)では、層と呼ばれるこの各グループからそれぞれサンプルを抽出します。これにより、すべてのサブグループから確実に代表が選ばれるため、単純無作為サンプリングよりも正確な結果が得られます。
一般的には、性別や年齢、所得階層、民族などの特徴によってグループ分け(層化)を行います。層は、互いに排他的な特定のものでなければなりません。つまり、母集団の各人がいずれか1つのグループに割り当てられる必要があります。母集団を層に分割したら、次に単純無作為サンプリングで、各層から母集団での割合に比例する人数だけランダムに選びます。こうして選ばれた個人を集めて1つのサンプルを構成します。
層化サンプリングと同様に、クラスターサンプリング(集落抽出法)でも母集団をサブグループ、つまりクラスターに分けます。2つの確率的サンプリングの違いは、この分け方にあります。クラスターサンプリングでは、層化サンプリングと異なり、各クラスターの特性が母集団と類似していなければなりません。そして、すべてのクラスターから一部のメンバーを選択する代わりに、クラスター自体をランダムに選択することから始めます。可能であれば、選択した各クラスターの全員を最終サンプルに含めると良いでしょう。クラスターの規模が大きすぎる場合は、さらに個人をランダムに選択する必要があります。
調査者は多くの場合、すでに確立されている、アクセスしやすいグループをクラスターとして利用します。主に、市や国などの地理的な境界線に基づいたクラスターが使われますが、学区や支社の担当地域が基準になることもあります。クラスターサンプリングは、非常に大規模な母集団や、地理的に分散している母集団を調査する場合に、コストを節約する目的でよく使用されます。ただし、クラスターサンプリングでは、サンプリングエラーのリスクが高くなる点に注意が必要です。各クラスターが母集団全体を代表していると想定していますが、これを保証するのは限界があるからです。
系統的サンプリングは単純無作為サンプリングに似ていますが、より簡単に行えます。母集団の各人に番号を割り振り、一定の間隔でサンプルを選択します(そのため、等間隔サンプリングとも呼ばれます)。つまり、母集団のリストで「n番目」になった人を選んでサンプルを構成することになります。
たとえば、1,000人の母集団で、9番目になった人を選び、その後も9人ごとに選択してサンプルを作ることができます。単純無作為サンプリングで必要な乱数生成器を使わず、明確かつ系統立った方法で個人を抽出できるので、他のサンプリング手法よりも単純明快です。逆に言えば、乱数生成器を使用する場合ほど無作為にならない可能性もあります。加えて、リストに、無作為選択に影響を与える可能性のある周期的なパターンが隠れていないかどうかを確認することも重要です。データ操作のリスクがあると、サンプルにバイアスが生じ、母集団を正確に代表しないものとなってしまいます。
たとえば、ある会社の従業員にアンケートを実施しようとして、全従業員のアルファベット順のリストを用意したとします。系統的サンプリングの手法で、リストから4人おきに従業員を選択する予定です。しかし、このアルファベット順のリストが実はチーム別で勤続年数順にも並べられているものであったら、リストの上の方に多い管理職の人を選択する割合が多くなったり、逆に少なくなったりして、サンプルが偏ってしまうでしょう。
確率的サンプリングにはいくつも利点があります。総体的に見ると、自社のターゲット層を代表する大規模なオーディエンスからサンプルを抽出する場合に、費用対効果が高い方法と言えます。また、地理的に分散している母集団の場合にも大きなメリットがあります。
確率的サンプリングの各タイプには、それぞれ異なる長所があります。たとえば、単純無作為サンプリングと系統的サンプリングは実施プロセスを楽にする一方、層化サンプリングは調査者のバイアスを減らし、クラスターサンプリングは調査のばらつきを抑えます。小回りの効く体験管理プラットフォームを活用すれば、確率的サンプリングに技術的な専門知識はほとんど必要ありません。母集団のサンプルを作成する際に、層化サンプリングや系統的サンプリングを使用して、好きなだけ詳細な設定をすることも可能です。もしも締め切りに追われているなら、クラスターサンプリングか単純無作為サンプリングがおすすめです。
どんなメリットにも、調査を全体的な視点で見ると逆効果になってしまう側面があるものです。たとえば、母集団をできる限り正確に反映したサンプルを収集したいと思えば、必要な調査が増え、それだけ多くの時間とリソースを費やさなければなりません。層化サンプリングを使うと、各クラスターから等しく代表者を抽出することができますが、それらの層が母集団内のすべての差異を反映しているとは限りません。
逆に、クラスターサンプリングでは、層をそれぞれのクラスターに分散させることができますが、クラスターの特徴が重複して偏っている可能性があります。また、単純無作為サンプリングでは結果を素早く得ることができますが、サンプルに含まれるクラスターと層は、求めているオーディエンスと違って的外れかもしれません。
確率的サンプリングは、大規模な母集団に関する結論を導き出すために、統計解析を行うことが目的の定量調査に適しています。母集団全体を調査することが難しく、費用がかかりすぎる場合に、調査者はこのサンプリング戦略を使って代表的なデータを収集することができます。
多くの市場調査で、大規模な母集団についての洞察を得るために、確率的サンプリングが活用されています。たとえば、次のような目的で利用します。
たとえば、日本全国に2,000店舗を展開しているカフェチェーンがあるとします。同社は、支払い方法の選択肢を増やし、特典獲得の新たな方法を導入することで、顧客ロイヤリティプログラムの充実を図っています。しかし、この大きな変更を全店舗に導入する前に、予定している変更に対する顧客の反応を知りたいと考えました。
2,000か所もある全店舗ですべての顧客に意見を尋ねることは現実的ではありません。そこで同社では確率的サンプリングの手法を使って、母集団を正確に代表するサンプルを作ることにしました。寄せられた回答から、ロイヤリティプログラムのアップデートについて、顧客が全体としてどのように感じているかがわかります。その結果、会社のマーケティング部門からカスタマーサービス担当者まで、各部署がこのデータを活用して、どのような点を改善する必要があるのか、効果的に宣伝するためにはどうすればよいかを把握することができます。また、会社が母集団の性別や年齢層、所得水準などのサブグループをサンプルに確実に反映したい場合は、層化サンプリングやクラスターサンプリングなど、特定の確率的サンプリングの方法を選ぶと良いでしょう。
このように母集団がかなり大規模な場合(この例では2,000もの店舗数)には、確率的サンプリングが適切な方法です。確率的サンプリングの手法に忠実に行うと、サンプルが多ければ多いほど、母集団を代表しないサンプルを選択した場合に発生する「サンプリングエラー」の可能性を減らすことができます。また、無作為サンプリングでは一般的に、主観的ではなく系統立ててサンプルを選択することも、サンプリングエラーを最小限に抑えられる理由です。
母集団の誰かをサンプル選択のプロセスから故意に除外することは無いと思います。しかし、意図せずして、特定のグループが参加できなくなる可能性があるので、注意を怠らないようにしてください。
たとえば、開放的な政策に舵を切った新しい入国管理法に対する米国世論の反応を知りたいとします。アンケートにスペイン語版を準備する予定はありますか?絶対に必要ですよね。そうでないと、英語でのアンケートは苦手だけど、この調査にとって非常に有益だと思われる移民に関する意見を持っている、スペイン語を母語とする人々の声をかなりの割合で聞き逃してしまうことになります。もしこの人たちの意見が無視されれば、リアルな世論とはほど遠いアンケート結果が導き出されることでしょう。
母集団の全員にアンケートに答えるチャンスを与えることができなければ、代表するサンプルは得られず、確率的サンプリングに基づいた調査とは言えないことを覚えておいてください。
ご紹介した単純無作為サンプリング、層化サンプリング、クラスターサンプリング、そして系統的サンプリングは、いずれも確率的サンプリングの仲間ですが、これとは逆の特徴を持つサンプリング手法もあります。その名も、非確率的サンプリングです。サンプルを無作為に抽出することをすでに決めている場合でも、非確率的サンプリングの基本(いつ、どのような理由で使用するかなど)を理解しておくことが大切です。
非確率的サンプリングでは、母集団メンバーのサンプルに選ばれる確率が全員均等にはなりません。選択方法が無作為ではないのです。実際、中には選択される可能性がゼロのメンバーも出てきます。確率的サンプリングがより大きな集団に関する結論を引き出すことを目的としているのに対し、非確率的サンプリングは、特定の専門知識や経験、インサイトを持つ人から話を聞くことに重点を置いた、探索的で質的な調査によく使用されます。
たとえば、地域でのスロープの使用状況について調査しており、対象とする母集団は自分の住む町で車いすを使用している人とします。この母集団を網羅するリストはないため、確率的サンプリングは初めから選択肢から除外されます。しかし、調査への参加に同意してくれる数人の車いす利用者に出会い、その地域に住む他の車いす利用者を紹介してくれました。スノーボールサンプリングと呼ばれるこの非確率的サンプリングでは、無作為な選択が行われずとも、調査の対象となる人と次々と接触できる可能性があります。
非確率的サンプリングは、一般的に実施するのが簡単で、コストも比較的かかりません。しかし、確率的サンプリングに比べてサンプリングに偏りが生じるリスクが高くなります。これは、サンプルの選択プロセスが無作為ではなく、調査者の主観的な判断に基づいているためです。この場合、サンプルサイズと最終結果は、母集団全体を代表するものである必要はありません。
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では、いざ確率的サンプリングを実施しようと思ったら、どのような手順を踏めばよいのでしょう。実際はそれほど複雑なことではありませんが、調査の明確な目標や関心は必要です。事前に計画を立て、どのような結果を得たいかを十分に考えてから始めると、サンプルの抽出方法とその理由を絞り込む段階に非常に役立ちます。
意見を聞きたい人を漏れなく挙げていき、意図的に除外される人についても十分検討しましょう。
理想的には、対象母集団のすべてのメンバーをサンプルフレームに含めるべきです(そして、対象母集団に該当しない人は除外します)。
クラスターや層は必要ですか?すべてのサンプルメンバーの選択される確率を等しくしますか?調査の分野や母集団、利用できるリソースなどを考慮して、理にかなった手法を選びましょう。
調査対象の母集団によっては、適切なサンプルフレームを見つけるのに苦労する場合があります。たとえサンプルフレームが上手くいったとしても、最善のサンプリング手法を選ぼうとすると、コスト、代表性、質、時間などの面で妥協を余儀なくされるかもしれません。
アンケートのトピックに興味がない人や、回答に費やす時間や労力に対する見返りを得たいと思う回答者に、純粋な確率的サンプリングによるアンケートに回答してもらうことは時として困難です。時間がかかり過ぎる場合も。たとえば、独力で(回答者を見つけて、無作為に選択するツールを使用せず)市場調査を実施する場合、サンプル数が増えると、調査の分析にたどり着く前に、かなりの時間と労力が必要になります。
このような多くの問題は、非確率的サンプリングを利用することで解決できます。この方法でも、(その名称にもかかわらず)確率とサンプリング理論に基づいて適切なアンケートサンプルを選択できるのです。
リソースに制約がない場合や、対象とする母集団が少ない場合には、確率的サンプリングに敢えてする必要はないかもしれません。しかし、ほとんどの場合、確率的サンプリングの方が時間とコストを節約でき、かなりのストレスを減らすことができます。通常、全員にアンケートを実施することはできませんが、全員にアンケートの機会を与えることは可能です。これを実現するのが確率的サンプリングなのです。
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