顧客体験(CX)の強化に取り組むなら、ユーザー体験(UX)も忘れてはなりません。
UXはCXの重要な一部です。商品やサービスの利用体験であるUXが悪ければ、顧客を満足させることはできません。満足しなければ、いずれ離れて行ってしまうでしょう。
では、このユーザー体験の課題を優先順位付けし、改善していく道しるべとなるのは何でしょうか。そう、データに基づいた改革の指針、ユーザーエクスペリエンスの測定です。
本ガイドではユーザーエクスペリエンスの測定について以下の流れで詳しくご説明します。
ユーザー体験(UX)とは、製品やアプリ、Webサイトなどを利用するときの体験を指します。ユーザーが簡単かつ直感的に問題を解決してニーズを満たせるようにしていますか。どう頑張っても解決せず、苛立ちを募らせてはいませんか。
ユーザー体験はCXの一部で、CXの中にデジタル体験(DX)とユーザーインターフェース(UI)もあります。
デジタル体験は、顧客がWebサイトやアプリ、SNSなどのデジタルタッチポイントを介して企業とやり取りする際のすべての体験と、それによって抱く感情や認識を指します。
ユーザーインターフェースは、ユーザーがデバイス、Webサイト、またはアプリを使ってやり取りする際の接点となるすべての要素です。具体的にはボタン、アイコン、間隔、タイポグラフィ、レスポンシブデザインなどです。
これらの関係を図にすると、CXの中でUX、UI、DXがこのように重なり合います。
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UX指標は、ユーザーによる製品・アプリ・Webサイトの利用体験の質を示す量的および質的なデータポイントです。UXデザイン戦略の効果を測定し、比較・追跡したりすることができます。
優れたユーザー体験を提供すると、満足度の高いユーザーを増やし、コンバージョンレートを高め、技術的な問題を減らすことができるため、長期的な視点でのコスト削減にもつながります。
UX指標そのものは、ビジネスに関する指標ではなくユーザーに関する指標です。しかし、ユーザーの満足度が上がれば企業にも良い影響があるものです。たとえば、顧客維持率やロイヤリティの向上を目指している企業などでは、UXが大きな役割を担います。簡単で心地よいユーザー体験は、ブランドのファンやリピーターを増やします。
UX指標には主に、行動と態度の2つの種類があります。この違いは、ユーザーの行動(作業を完了するまでに費やした時間など)を測定するのか、ユーザーの態度(どの程度自信を持って作業を進められたかなど)を測定するのかです。
行動指標は通常、量的なデータで表され、ユーザーが製品を利用する際にとる行動を測定します。ユーザーがモバイルアプリを使用する頻度や時間、閲覧するページなどです。
行動指標の多くは、サイトやアプリの分析、ユーザーセッションのデータ、バグの確認などによって、ユーザー体験を中断することなく自動的に追跡できます。しかし、これだけではUXの一側面しか分かりません。体験が悪化していることを示すデータが得られても、その理由や、ユーザーがどう感じているのか、どのような影響があったのかは把握できないからです。そこで活躍するのが態度指標です。
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態度指標は、製品に対するユーザーの感情や意見を測定する指標です。アプリは操作しやすいか、Webサイトは便利か、購入手続きの体験にどの程度満足しているかなどを測ります。
行動指標と態度の測定は、ユーザーエクスペリエンスの測定の分類方法のひとつで、ほかにも対象領域に基づいて分類する以下のような方法があります。
Webサイトのフローが効率的かどうかを知りたい場合は、ユーザビリティ指標を使います。使いやすさを正確に把握し、作業の完了率やエラー数などの行動データを測定します。
顧客エンゲージメントの急落の背景にユーザー体験の変化はないでしょうか。ページビュー数やセッション時間などの行動データを追跡し、ユーザーフィードバックの自由回答形式の質問で質的な態度指標を優先的に測ると効果的です。
アプリの機能と改善点は把握していますか。顧客満足度(CSAT)スコア のような 満足度 指標は、ユーザー体験が顧客の期待に応えているかどうかを明らかにします。
完了時間(または作業時間)は、ユーザーがWebサイトやアプリ内で特定の作業を完了するのに費やした所要時間です。このユーザビリティ指標は、直接的な観察(ユーザーと同じ部屋でその行動や所要時間を記録するなど)か、ユーザーのバックエンド分析によって収集できます。完了時間は非常に便利な指標で、システムが意図したとおりに機能しているかどうかを把握し、顧客満足度の低下を引き起こしている問題を検出することができます。
一方の態度指標では、カスタマー エフォート スコア(CES)からユーザビリティを測定できます。CESアンケートが収集するデータはユーザーが自己申告したもの、つまり主観的なデータで、作業ややり取りを完了するのに費やした労力を反映します。常に労力を減らすように工夫し、最低限のストレスで素早く望む場所に移動できるUXの構築を目指しましょう。
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エラー率は、Webサイトやアプリの使用中にユーザーがミスをする頻度を示します。Webサイトのクリックできない場所をクリックしたり、間違ったページを選択したりするような行動です。エラー率は、ユーザー体験の危険信号に他なりません。顧客の期待に応えられていないペインポイントを反映しています。
システム ユーザビリティ スケールは、使いやすさに関する具体的な10の質問で構成されており、5段階尺度で回答します。SUSの質問は難しいものではなく、一般的にユーザーアンケートで尋ねます。ただ、スコアの計算方法は少し複雑で、ユーザー体験に関する詳細な分析まではできません。
コンバージョンレートは、Webサイトやアプリで成果としている望ましい行動に至ったユーザーの割合です。通常、Webサイト訪問者のうち購入を行った割合を意味しますが、サブスクリプションのアップグレードやニュースレターの購読登録、アプリのダウンロードなどを行う人の割合として使用することもできます。
コンバージョンレートは、ユーザーがWebサイトにアクセスすると何が起こるかを示す便利な指標です。大規模な広告キャンペーンに投資をしてサイトに誘導する際にコンバージョンレートを監視すると、サイトにアクセスした後に成果につながる行動を起こしているかどうかが一目瞭然になります。期待どおりの成果がでていなければ、UX要素を見直す必要があるでしょう。
顧客の維持に力を入れている企業は、継続率に注目してください。この重要指標は、最初の訪問の後にWebサイトやアプリを継続して利用しているユーザーの割合です。
継続率を見ると、ユーザー体験への投資のROIを知ることができます。たとえば、機能を追加したり、購入手続きを簡略化するなど、UIやUXの改善を行った後に継続率が上昇するのは良い兆候です。
Net Promoter Scoreでは、顧客が自らの体験に基づいて製品やアプリ、Webサイトを他者に薦める可能性がわかります。
標準的な選択回答形式のNPS質問の後に、より詳しい情報を収集する自由回答形式の質問を加えると、ユーザー体験の問題や機会、成果が明らかになる顧客ロイヤリティの指標です。
たとえば、NPSが「3」と評価された場合、その後の自由回答形式のフィードバックがなければ理由がわからず、「Webサイトの操作性が悪いせいでスコアが低い」といったことも分からずじまいです。
今日のデジタル環境では、Webサイトやアプリの読み込みにかかる読み込み時間の追跡は必須です。表示速度が遅いと訪問者のストレスが溜まってサイトを離れる可能性が高くなり、満足度は下がります。読み込み時間には次の2つが含まれます。
ユーザーはWebサイトやアプリに表示された内容をじっくり見ているでしょうか。それともチラッと見て他に移動してしまったでしょうか。スクロール距離はページをスクロールした長さを測定する指標で、ユーザーの興味を維持しているかどうかを示します。
このWebサイト指標ではページのどの部分が注目され、どの部分が興味を持たれていないかを明らかにするため、ページビュー数よりも多くのコンテキストを把握できます。
満足度は、製品やWebサイトの機能などに対してユーザーがどれだけ満足したかを測定します。UXの満足度は顧客満足度スコア(CSAT)を使用して、顧客満足度と同じ方法で測定できます。
CSATは多機能な指標で、顧客の全体的な感情を把握することも、カスタマージャーニーの特定のトピックや機能、段階に関する顧客の感情を細かく調査することもできます。ほとんどの場合、「まったく満足していない」から「とても満足している」までの5段階尺度で回答してもらいます。
その後、こちらの手順で満足している顧客の割合を計算します。
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では、以上を踏まえて、ユーザー体験を測定した後にデータに基づいて正しい意思決定を下す方法を見ていきましょう。
5段階の基本的な手順で行います。
UXデータの収集方法は、収集しようとしているデータの種類によって異なります。態度データについては、ユーザーへのアンケートかインタビューを実施します。SurveyMonkeyでは、CSATやNPSなどのフィードバックをすばやく効率的に収集できるよう、専門家が作成したアンケートテンプレートを400種類以上用意しています。さらに、収集した情報はフォーカスグループでの話し合いや、もっと踏み込んだUX調査にも役立ちます。
行動データは、サイト分析とユーザビリティツールを使って量的調査データを収集します。また、Webサイトの各要素に対してユーザーがどのように反応しているかをより深く理解するためにヒートマップを活用することもできます。
UXデザインにおける重要な分析のひとつに、エンドユーザーエクスペリエンスの測定のベンチマーク比較があります。業界内のユーザーの期待をよく理解するだけが目的であっても、自社の進捗状況と他社との比較を把握することは有益です。
UX指標は自社の旧デザインや業界平均、主要な競争相手と比較することができます。右へ倣うのではなく、新機軸を打ち出すためにも、競合他社の動向にアンテナを張りましょう。
UX指標をすべて念入りに調べた上で、UXデザインチームだけでなく組織全体で利用できるように一元管理しましょう。問題のある箇所を発見した場合は、どのように改善するかを考えます。UXでまだ活用していない機会があったら、ビジネス目標に照らし合わせてどのように活用できるかを考えてみましょう。
ユーザーのために改善したい成果は何ですか。
ビジネスのためにどのような成果を得たいですか。
目標と得られた指標の値に基づいてUXを変更します。スクロールの距離が短い場合は、Webページのレイアウトを変えてみましょう。購入手続きでCESの評価が低い場合は、手続きをもっとシンプルにする必要があります。UX指標を使って効率良く変更を加えましょう。
UXに関連するROIが、直接的な因果関係のあるものかどうかを検証するのは難しい場合もあります。顧客体験やビジネスのより大きな変更など、他の要因が絡んでいることも考えられるからです。しかし、もし取り組みと結果との間にできる限り直接的な因果関係が見つかれば、物事を進めやすくなるでしょう。
まずは、UXデザインが悪いとコストがかさむため、ユーザー体験の改善はユーザーにメリットがあるだけでなく、事業のコスト削減も実現できる点を強調します。
次に、上記のステップを参考にして、提案するUX変更に必要な時間、労力、リソースの概要を説明します。変更によりユーザーにどのような影響があり、どのようなビジネスの成果を生み出すかを数値化する必要があります。
さて、数あるUX指標の中で一体どれから始めればよいのでしょうか。顧客体験とUXデザインのプロの多くは、GoogleのHEARTフレームワークを基に以下を行っています。
ユーザーを中心とした指標のHEARTフレームワークは、元々WebベースのUX用に構築されましたが、その他のユーザー体験にも応用できます。
HEARTは、Happiness(満足度)、Engagement(エンゲージメント)、Adoption(採用率)、Retention(定着)、Task success(タスクの成功)の頭文字です。それぞれの説明から態度指標か行動指標かがわかります。
HEARTフレームワークを使うと、たとえば以下のようにUX指標を設定することができます。
UXを優先することは、すなわち顧客を優先することです。ユーザー体験の推移を測定して比較し、追跡するために、UXの行動指標と態度指標の両方を集めましょう。そして、リアルタイムのユーザーフィードバックから発見したチャンスは必ず生かしましょう。適切なUX指標を設定すれば、ユーザーとビジネスの両方に与える改善の影響を説明できます。
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Net Promoter®およびNPS®は、Bain & Company, Inc.、Satmetrix Systems、Inc.、Fred Reichheldの登録商標です。
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