顧客が去っていくのを見るのは辛いことです。プランの契約を更新終了したり、1回購入したきりだったり。あるいは、ぱったり連絡がなくなる、ということもあります。いずれにしろ、顧客離れは企業にとって深刻な懸念です。
顧客離脱率のモニタリングでは、ただ指標を追うだけでなく、会社に対して顧客が全体的に満足しているかどうかを分析します。顧客離れが少ない企業は、顧客を喜ばせ、優れた体験を提供し、エンゲージメントを高く維持している企業です。
では、顧客離脱率のモニタリングが重要な理由や、離脱を減らすための戦略、顧客を維持する戦略が収益の拡大に大きく貢献する理由を詳しく見てみましょう。
顧客の離脱とは、顧客が顧客であることをやめる現象です。つまり、会社の製品やサービスを買わなくなることです。
新しい顧客を獲得する一方で、既存の顧客の一部が何らかの理由で離れて行くことは、自然な成り行きであり、ビジネスサイクルの一部です。最高の業績を誇る企業でも顧客を失うことはあり、多くの場合、それは制御不可能な理由で起こります。
しかし、高すぎる離脱率は、企業とって大きな痛手です。新規顧客の獲得はコストがかかります。また、常連だった顧客が多く離れて行く場合は、製品や顧客体験に何らかの問題があると考えられます。
顧客離脱率は、一定の期間に失われた顧客の割合を指します。つまり、会社との取引をやめた顧客の割合です。
では、顧客離脱率はどのように計算するのでしょうか。この重要な指標は、簡単な式で計算できます。
式で表すと、次のようになります。
この計算式を具体的に理解するために、簡単な例を見てみましょう。
ある会社の顧客数が、四半期の初めで100人だったとします。四半期の終わりまでに7人の顧客を失いました。計算式を使うと、顧客離脱率を次のように求めることができます。
7%(あるいはどのような数字であれ)の顧客離れを防ぐことができたら、ビジネスに大きく影響することは間違いありません。たとえば、収益の安定性が改善され、顧客の生涯価値が上昇し、収益が増加するでしょう。
顧客離脱率は、どのような値なら良いのでしょうか。これには1つの正解があるわけではなく、業種や企業ごとに異なるのが実情です。しかし、数字を解釈する上で参考となるガイドラインはあります。離脱率が2~8%であれば、ほとんどの業界で適正であるか、少なくとも許容範囲内と言えます。一部の業界(たとえばオンライン小売)では、平均離脱率が22%に及ぶこともあります。
自分の会社の数字を正しく解釈するためには、業界の平均離脱率や例外的な離脱率、さらには競合他社の数字を調べる必要があります。
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顧客が離れて行く原因はさまざまですが、ここでは一般的なものをご紹介します。
問題や質問が生じたときに適切なサービスやサポートが受けられなかった顧客は、高い確率で離れていきます。
優れたカスタマーサービスを提供する相手は、新規顧客に限られません。長年にわたって利用している常連の顧客も、優れたサービスを必要とします。
その市場で長年にわたって事業を展開している場合でも、顧客のニーズが変化することを忘れないようにしましょう。顧客は、新しい機能や支払い方法、特定のメンバーシップパッケージを求めているかも知れません。
顧客フィードバックを定期的に集めれば、顧客の最新のニーズ、最新の嗜好・要望を把握することができます。
製品やサービスを使い始めた頃の顧客は、その価格に満足していたはずです。しかし、市場の状況が変化して新しい企業が参入したり、新規顧客向けの割引期間が終了して価格が上がったりすると、顧客が突然よその会社に乗り換えることがあります。このような場合は、価格が顧客離れの原因であると考えられます。
顧客離脱率が高い場合は、製品と市場の適合性が低い可能性があります。ターゲット層を間違えている可能性もあります。製品ロードマップを作成し、顧客フィードバックを集めて、製品を顧客の期待に合わせるようにしましょう。
顧客の中には、プランを購入しておきながら、製品をあまり(あるいはまったく)使用しない人がいます。これは、特にソフトウェア業界に多く見られる現象です。
このようにエンゲージメントの低い顧客がいても、収益に貢献してくれているので気にならないかも知れません。しかし、これは離脱する可能性が最も高い顧客です。エンゲージメント、つまり製品の使用率を高めれば、離脱率の低下につながります。
離脱率が業界平均に比べて高く、収益や成長に影響している場合は、離脱率を下げることが不可欠です。
高い離脱率を解決してくれる単一の策というのはありませんが、以下のような複数の手順を踏んで会社の問題点を特定・解決し、離脱率の低下につなげることができます。
顧客がなぜブランドから離れて行くのかを理解せずに、離脱の問題を解決することはできません。顧客離れの理由を明らかにすれば、会社の問題点を特定し、解決することができます。
顧客離脱率を徹底的に分析するには、まず、顧客と対話する必要があります。インタビューやフォーカスグループ、アンケートといった手段を使ってフィードバックを集め、顧客がどのようなニーズ・期待を持っているのか、会社がそれに応えているかを理解します。
離れて行った顧客の意見を聞くことはもちろん重要ですが、対話の相手をそれだけに限定するのは得策ではありません。引き続き利用してくれている顧客からも意見を聞き、製品やサービスのどこが気に入っているのかを調べましょう。そうすれば、うまく行っている部分を把握できます。
新規顧客や既存顧客をサポートし、製品・サービスから最大限の価値を引き出してもらえるようにすれば、顧客を維持できる可能性が高まります。そのためには、予見的なサポートを提供することが大切です。
たとえば、顧客が製品を使い始めてすぐに全機能を使いこなせるように、丁寧なオンボーディングプログラムを用意します。または、カスタマージャーニーの各段階で既知の問題に遭遇した顧客のために、セルフサービスリソースを用意します。
しかし、顧客からのサポート要求を待っていてはいけません。顧客フィードバックデータを活用して、どのようなリソースがあれば製品・サービスを効果的に使用してもらえるか、リソースをどのタイミングでどのように提供すれば最良の結果が得られるかを理解しましょう。
顧客体験を改善すると同時に、常連客のロイヤリティを高めることができます。また、顧客の問題を効果的に解決できるようにするため、顧客フィードバックデータを利用して、追加の従業員トレーニングや資格認定を実施することもできます。
すばらしい製品を提供していても、適切な層をターゲットにしないと顧客の離脱は防げません。
たとえば、ある会社が中小企業を支援する経理士向けの会計ソフトを販売しているとしましょう。ところが会社は、製品の価値を理解してくれる経理士ではなく、中小企業の経営者に向けてマーケティングを行っています。これでは、メッセージが正しい相手に届きません。
現在誰をターゲットにしていて、本当なら誰をターゲットにすべきかを特定すれば、離脱につながるギャップを埋めることができます。満足度とエンゲージメントの高い顧客層を特定し、離脱の多い顧客層と比べることで、ターゲット層の設定を修正し、顧客離れの可能性を低くすることができます。
顧客は、信頼できると感じたブランドや会社を長く利用します。信頼を得るための1つの方法は、話題のトピックや新機能、会社のニュースなどを顧客に積極的に伝えることです。
顧客に最新の情報を提供し、継続的に連絡を取れば、強力な関係を築くことができます。新機能を導入してもらうきっかけにもなり、顧客が製品から得る価値が高まります。会社に関する重要なニュースを顧客がSNSに投稿してくれれば、口コミマーケティングにもなります。
離脱しそうな顧客には、どのような予兆が見られるのでしょうか。自分の事業に特有の症状をよく調べ、顧客が離れて行く前に離脱のリスクに気づく必要があります。
エンゲージメントの低さは、一般に離脱の可能性を示します。たとえば、ある顧客セグメントが月に1~2回しかソフトウェア製品にログインしていないなら、そのセグメントの顧客が離れて行くのは時間の問題でしょう。使用頻度を聞くアンケートを実施すれば、深刻な事態になる前に予兆を捉えることができます。
もう1つの予兆は、カスタマーサービスに未解決の案件がある場合です。また、契約の更新時期に離脱が多い場合は、離脱が価格と関連していると考えられます。
離脱しそうな顧客の予兆を見極めれば、顧客体験のどこに離脱の原因となるような弱点があるのかが明らかになります。それにより、どの顧客が個人的なコミュニケーションを必要としており、どの顧客が追加のリソースを欲しているかを特定し、顧客離れの予防に役立てることができます。
どのような顧客体験を提供するかによって、今後の顧客関係が決まります。SurveyMonkeyのCXの現状調査によれば、消費者の91%は、ポジティブな体験をした会社を友人などに勧める可能性が高いということです。一方、CX担当者の89%が、悪い顧客体験は会社の顧客離脱率に大きな影響を与えていると答えています。
顧客体験を改善する最良の方法は、顧客体験を真に理解することです。では、会社が提供している顧客体験を最もよく知っているのは誰でしょう。それは顧客自身です。顧客を対象にアンケートを行い、フィードバックをもらうことは、CXを強化するための優れた方法です。
たとえば、さまざまなタッチポイントでアンケートを実施します。購入前のやり取りについて集めた情報は、マーケティングファネルの効率化に役立ちます。また、購入後のタッチポイント(カスタマーサポートなど)で集めたフィードバックは、顧客への対応が十分かどうかを特定するのに役立ちます。
顧客体験の弱点を特定することで、それを修正する実用的な戦略に一歩近づきます。小さな修正でも、積み重ねていけば雪だるま式に効果が拡大し、優れた顧客体験を生み出すことができます。
まだ納得されていない方は、ぜひ顧客体験のROIを計算する方法をご覧ください。具体的な数字を見れば、ポジティブな顧客体験が持つ力を実感できるでしょう。
ビジネスの健全度を追跡する上で重要な指標は、離脱率だけではありません。顧客離脱率に加えて以下のようなCX指標を追跡すると、顧客離れの理由や防止策がわかり、顧客体験の全体像をとらえることができます。
これらの指標を追跡するお客様の声(VoC)プログラムを作成すると、成功に向かって前進することができます。顧客のエンゲージメント・満足度の低さは、典型的な顧客離れの前兆です。それをできるだけ早く感知すれば、問題解決に取り掛かることができます。
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顧客を成功に導く上で鍵となるのは、スムーズなオンボーディングプロセスです。手順・操作がよくわからない顧客や、製品の価値を引き出す方法を知らない顧客は、離脱する可能性が高いです。
丁寧で包括的なオンボーディングプロセスを提供することが大切です。それには、効果的な方法が2つあります。
オンボーディングプロセスを改善するこれらの方法だけでなく、基本的な条件がきちんと満たされていることも確認しましょう。たとえば、優れたオンボーディングプロセスでは、チュートリアルやガイドだけでなく、サポートを必要とする顧客に継続的にサポートを提供する必要があります。製品を使い始める顧客を支援し、製品から最大限の価値を引き出せるようにすることが最優先です。
すぐに使える顧客フィードバック アンケート テンプレートはこちらです。
顧客の立場で考える作業は、オンボーディングだけにとどまりません。顧客体験を最初から最後までたどる、カスタマー ジャーニー マップを作成しましょう。
カスタマー ジャーニー マップは、顧客とブランドの間でやり取りが生じるタッチポイントをすべて特定したものです。アンケートを使って各タッチポイントの成功度を追跡すれば、提供しているカスタマージャーニーの全体像を把握し、各タッチポイントを効率化し、改善計画を立てることができます。
顧客離脱率は、「その他大勢」の指標の1つではなく、顧客体験全体の健全度を示す重要な指標です。だからこそ、追跡して改善する必要があります。アンケートを使えば、データに基づいてCXを改善する方法が見つかります。
あらゆるタスクで顧客体験を重要視することが、顧客離れの低下につながります。きっと顧客に感謝されるはずです。
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