リッカート尺度は、リサーチ担当者が多種多様な意見・感想を収集するための構造的な方法で、回答者は文章や質問に対して賛成や反対、中立を表明します。
レンシス・リッカートにちなんで名付けられたこの尺度は、心理学や社会学、市場調査などの分野で、質的データを効果的に数値化するために幅広く使用されています。
では早速、リッカート尺度の質問を構成する要素を、使用例・使用できる機会・アンケートへの応用方法を含めて見ていきましょう。
リッカートの評価スケールを理解する前に、まず、アンケートにおけるスケール(尺度)について復習しましょう。
アンケートのスケールとは、あるトピックに対するさまざまな意見をカバーする一連の回答選択肢(数字または言葉)を指します。どのようなスケールを使うにせよ、すべて選択回答形式の質問(あらかじめ用意された選択肢を回答者に提示する質問)の一種になります。
リッカート尺度とは、アンケート参加者の見解や意識、モチベーションなどを測るために使用する評価スケールです。一方の極端な意見からその対極にある意見までを選択肢として用いますが、通常、軽度あるいは中立的な選択肢も含みます。最も一般的なものは4~7ポイントのスケールです。
では、リッカート尺度のアンケート質問とは何でしょうか。それは、回答者が「当社の製品を気に入っていますか?」といった、「はい/いいえ」型の質問に答える代わりに、自分の意識を「まったく気に入っていない」から「とても気に入っている」のスケールで評価するタイプの質問を指します。
リッカート尺度では、リサーチ担当者やアンケートを行う人が、個々の意見、心理、意識の複雑さを効果的に数値化して把握できます。たとえば「この製品は好きだけど、大好きというほどではない」と思っている人は、「まあまあ好き」というリッカート評価を選ぶでしょう。
リッカート尺度(生みの親であるアメリカの社会学者レンシス・リッカートの名にちなんだ名称)は、その信頼性の高さゆえに非常に人気のある、意見・認識・行動を測定する方法の1つです。
リッカート尺度の設計は簡単で、多種多様なトピックや量的アンケートに使用できます。
回答の選択肢が2つしか与えられない二者択一の質問に比べて、リッカート尺度の質問では、自社製品が単に「まあまあ」だったのか、(願わくば)「極めて優れている」のかという、より細かいフィードバックを得ることができます。
リッカート尺度のアンケートにはさまざまな形があります。以下は、最も一般的に使われる質問のタイプです。
可能性:回答者がある特定の行動をとる可能性(会員に登録する、製品を購入するなど)を尋ねます。ある企画に対する感想を聞く代わりに、どの程度行動を起こす可能性があるかを知りたいときに役立ちます。
満足度:自社が提供するものや、行っていることに対して、顧客はどの程度満足しているでしょうか?満足度を把握するための質問をしてみましょう。
重要性:特定のサービス、製品、あるいは体験に関する感情の強さを知りたい場合、その顧客にとっての重要性を測定するリッカート尺度の質問をしてみましょう。
リッカート尺度は非常にフレキシブルな評価スケールなので、評価ポイントをアンケート設計に合わせて容易に調整できます。一般的なものには4段階、5段階、7段階、および10段階評価があります。
4段階評価のリッカート尺度には通常、スケールの中間点や中立点がなく、回答者に特定の立場を表明してもらうために使用します。4段階評価のリッカート尺度の一例を以下に記載します。
製品配送のスピードについて満足度を教えてください。
5段階評価のリッカート尺度には中間点や中立点を含む5つの選択肢があり、回答者の意見を評価します。5段階評価のリッカート尺度の一例を以下に記載します。
当社のモバイルアプリに登録するのはどの程度簡単ですか?
6段階評価のリッカート尺度は、4段階評価の尺度に似ていますが、回答者により多くの選択肢を提供します。6段階評価のリッカート尺度の一例を以下に記載します。
あなたにとってのSNSの重要度を教えてください。
7段階評価のリッカート尺度では、アンケートの回答者に多彩な選択肢を提供することで、さらに詳細なデータセットを得られます。7段階評価のリッカート尺度のアンケートの一例を以下に記載します。
「会社は従業員のキャリア育成のサポートをしている」という意見に同意しますか?
10段階評価のリッカート尺度では回答者に10個の選択肢を提示し、より詳細かつ精度の高いデータ収集を可能にします。以下は10段階尺度の例です。
自分のキャリアの成長について上司と定期的に話し合うことは、あなたにとってどの程度重要ですか?
Net Promoter® Score (NPS)は、顧客満足度やブランドロイヤリティを測定するためによく使用される、人気のリッカート尺度の1つで、11段階(0~10)のリッカート尺度があります。NSPアンケートの質問は、文章ではなく数値をスケールに使用するという点で他と異なっています。
頻度は、量的アンケートのリッカート尺度でよく使われる測定方法です。製品の使用やチームビルディング活動への参加など、ある行動への自己申告による頻度データを回収します。
通常、どのくらいの頻度で当店でお買い物されますか?
リッカート尺度はまさしく順序尺度です。回答者が選択できる値と値の間隔は必ずしも等しいわけではなく、量的間隔の集合とみなすことはできません。
リッカート尺度では、2択式の質問よりも正確に意識や感想を把握できます。たとえば、「当社の製品を気に入っていますか?」という2択式の質問では、「この製品は好きだけど、大好きというほどではない」という顧客でも「はい」か「いいえ」しか回答できず、製品の「好きの程度」を理解することはほぼ不可能です。
これに対し、リッカート尺度の質問では、アンケート回答者からより正確で微妙なニュアンスのある答えが得られるため、アンケートデータの質が改善します。
アンケート内の一連の質問は、共通のトピックに焦点を当てたものであることが大切です。このちょっとした手間によって、より正確な結果が得られます。というのもデータをレポートにするときには、いくつかの質問の結果を要約したスコアを分析する必要が生じるからです。
例えば、最初にこのような質問をしたとします。
そして次のような質問を続けます:
一方、次のような質問はこのアンケートの別セクションで尋ねるのが適当です。
1つのトピック(上の例では「食事の質」)に関する質問をグループ化し、回答を合計して1つのスコアを得ることで、調査対象とする特定の製品・サービス・イベントなどに対する意識をより確実に測定できます。
自由形式型やランキング式、または「あてはまるものをすべて選択」型の質問に比べるとリッカート尺度は回答者にとって理解しやすく、答えるのも簡単です。そのため、回答者はアンケートに答える過程でアンケート疲れを感じたり、イライラしたりすることが少なくなります。回答者が満足のいく経験をすれば、今後のアンケートでも再びフィードバックを提供してくれるでしょう。
リッカート尺度では自社製品について顧客や従業員、ターゲット市場がどのように考えているかという洞察を得られますが、その理由についてはわかりません。たとえばリッカート尺度で、自社のモバイルアプリに対する顧客の満足度は把握できますが、顧客満足度の改善方法を提案するわけではありません。
リッカート尺度の段階の解釈や認識は、回答者によって異なります。また、個人によって意見や意識の極限に対する捉え方も変わってきます。誰かにとっての「強く同意する」は他の人にとっては「どちらかと言えば同意する」に当たるかもしれません。
このような潜在的な主観問題を和らげるには、リサーチ担当者やアンケートの実行者が、正しいスケール数のリッカート尺度を選ぶようにしなければなりません。スケールがたくさんあればデータによりニュアンスが増しますが、たくさんあり過ぎると回答選択肢の違いが曖昧になってしまうかもしれません。
アンケートのトピックによっては、回答者は極端な物の見方をしていると受け止められないよう、敢えてリッカート尺度の中立的な段階を選ぶかもしれません。たとえばある顧客が自社製品、サービス、または事業の様々な点についてリッカート尺度の1~10で評価をするとします。この場合、多くの回答は中間(4~7)に収まり、高い段階(8~10)や低い段階(1~3)は少数に留まります。
アンケートは匿名であることを回答者に必ず知らせましょう。中立・中間の選択肢を設けるべきタイミングを理解することは非常に重要ですが、それは尋ねられている特定の質問によって異なります。
たとえば以下のような構造では、中立的な感情が成立する余地があります。
この体験は前向きな、または否定的な影響がありましたか?
Net Promoter Scoreは顧客のフィードバックを集めるために企業が利用する、評価の高いロイヤリティ指標です。NSPアンケートの作成は簡単で、「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどの程度ですか?」という質問に対して、回答者に0~10段階のリッカート尺度で評価してもらいます。
顧客が提示する回答は以下のグループに分けられます。
当社のWebサイト上で、チェックアウトを行うスピードについて満足度を教えてください。
NPSと同じく、従業員Net Promoter Scoreは雇用者に対する従業員の感情とロイヤリティを測定します。従業員は「この会社で働くことを友人や同僚に薦める可能性は、0~10段階でどの程度ですか」といった質問をされます。
従業員の回答も同様に以下のように分類されます。
従業員エンゲージメントアンケートでは、従業員が会社のミッションと目標にどの程度貢献しているかを測定します。アンケートから得られる洞察は、事業の健全性を示すことができます。リッカート尺度アンケートを使えば、従業員が会社人生についてどのように感じているかを把握でき、従業員トレーニング、キャリア開発、新しいポリシーなどのさまざまな課題に落とし込むことも可能です。
会社が提供するトレーニングの機会にどの程度満足していますか?
イベントの後にリッカート尺度で出席者のフィードバックを集めれば、イベントの成功度を評価できます。対面式でもオンラインでも、イベントフィードバックアンケートを行うことで、参加者の全体的な体験とイベントのさまざまな側面に対する感想を理解できるでしょう。たとえば次の通りです。
似たような興味を持つ人々と知り合う上で、このイベントはどの程度役に立ちましたか?
関連記事:イベントアンケートの究極ガイド
自社のWebサイトがどの程度使いやすいか、見込み客や顧客にどの程度楽しんでもらっているかを知りたい場合、アンケートを作成する理由は十分にあります。自社と自社製品を最善の方法で提示し、素晴らしいユーザー体験を提供していることを確認したいですよね。サイト訪問者からWebサイトに対するフィードバックを集める、リッカート尺度の質問の一例を以下に記載します:
情報を得るために当社のWebサイトを再訪する可能性はどの程度ありますか?
顧客自身や、その習慣について得た知識は必ず役立ちます。マーケティングチームや製品チームが、広告や新製品を顧客の要望に確実に沿ったものにするためには不可欠です。リッカート尺度の質問をすれば、顧客の意見や嗜好についてより深く理解できるようになります。以下に、顧客から意見を集めるためのアンケートの質問の一例を記載します:
魅力的なパッケージはあなたにとってどの程度重要ですか?
スピーディーかつ自信をもってアンケートを作成するための心強い味方がSurveyMonkeyジーニアス。回答の種類を選択するだけで、あなたの質問にピッタリの回答選択肢をまとめて自動入力してくれます。
上で述べてきたように、リッカート尺度はフレキシブルです。固定化されたアンケート構成を使用する必要はなく、何段階のスケールを使用するかは自分で決定できます。
決断を下すためには、考慮すべき点が色々とあります。リッカート尺度の段階数が少なければ、回答者にとっては読みやすく、回答しやすくなりますが、詳細やニュアンスといった部分には欠けるでしょう。
リッカート尺度の段階が増えると、よりきめ細かいデータが入手できますが、回答時間という点では犠牲を払わなければならず、回答者はすぐに疲労を感じてしまうでしょう。また、各段階の主観的な解釈も悪くなります。
その他に、スケールを奇数または偶数のどちらにするかも決めなければなりません。アンケートの回答者が、立場を明らかにすることがプロジェクトにとって重要であれば、リッカート尺度から中間点や中立点を排除し、偶数のスケールにすることを検討しましょう。
最終的には、リサーチの優先順位を考慮し、それに応じて要素を比較検討する必要があります。
有効性を最大限に高めるためには、リッカートタイプの質問を的確な表現にする必要があります。
たとえば、レストランのサービスに対する満足度を尋ねる場合、店員・ウェイター・受付のうち、どのサービスの側面に質問が向けられているのかを特定することが重要です。また、スピードや礼儀正しさ、料理と飲み物の品質など、サービスのどの側面を評価したいかを明確にする必要もあるでしょう。
リッカート尺度では、より具体的であるほど価値のあるデータが得られます。
リッカート尺度を作成する場合は、回答者があなたの意図を明確に理解できるように配慮しましょう。相対的なランク付けについての混乱を避けるため、回答選択肢には説明的な文章を使用します。
これにより、回答者はスケールを効果的に選べるようになります。
双極の構造とは、それ自体はまったく曖昧または中立的である中間点を挟んで二つの対照的な感情があるものを指します。単極の構成では、ある感情の程度が問われ、中立的な中間点は存在しません。ある感情が極限であるか、まったくないかのどちらかです。
たとえば、この記事がどの程度役に立ったかを評価するように依頼したとします。評価は、今まで読んだ中で最も役に立ったか、まったく役に立たなかったかの間になるでしょう。また、「どちらかと言えば役に立った」というような、中間に位置する意見もあると推測できます。これが単極構造の一例です。
意見表明型の文章にはリスクが伴い、多くの人は反対よりも賛成する傾向にあります。というのも、アンケートの回答者は肯定的な選択肢をより頻繁に選びがちだからです(同意、または黙従回答バイアスとして知られています)。意見よりは、質問をするほうが効果的です。
一旦リッカート尺度のアンケートを作成したら、大変な作業はほぼ完了したも同然です!ただし、アンケートの回答者から受け取ったデータを分析し、アンケートの対象領域でのパフォーマンスを測定する必要がまだあります。
リッカート尺度は順序尺度なので、リッカート尺度の分析では、中央値または最頻値を使用して集計するのが最も効果的です。中間/平均が常に役立つとは限りません。
リッカート尺度のデータを分析する際には、さまざまなスケール、またはカテゴリーにわたる回答の分布を確認する必要があります。各回答カテゴリーのパーセンテージを集計し、棒グラフを使って結果を視覚化できます。
プロジェクトの目的によっては、リッカート尺度の各段階をより簡単なカテゴリーに統合することも可能です。たとえば、「まったく満足していない」から「非常に満足している」までの5段階のリッカート尺度を使って顧客満足度を測定したとします。この場合、「どちらかと言えば満足している」または「非常に満足している」と答えた回答者の総数を見たほうが良いかもしれません。それにより肯定的な感情を持つ人の総数、またはパーセンテージを把握できるからです。NPSデータの対処方法も、尺度をカテゴライズする一例です。
リッカートアンケートのデータを分析する際には、非常に正確なデータ収集方法ではあるものの、社会的望ましさというバイアスの影響を受けやすいことに留意しましょう。特に難しい質問においては、人は正直であるよりも、社会的に許容されると思われる回答を選びがちだということです。実際の好みではなく、「わからない」や中立的な選択肢を選ぶ場合もあります。
ここまで読んだ方はもう、リッカート尺度の専門家と言っても良いでしょう。以下に、さらに効果を高めるためのヒントを6点ご紹介します。
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Net Promoter、Net Promoter Score、NPSは、Satmetrix Systems, Inc.、Bain & Company Inc.、Fred Reichheldの登録商標です。
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