新製品の開発を検討していて、市場に需要があるのかどうかを知りたいとしましょう。あるいは製品の開発はもう完了していて、競合製品が存在しているか(存在するなら、それはどの製品か)を調べたいときもあります。そのような調査は、どうやって行うのでしょうか。どんな質問をすべきか、どうすればわかるのでしょうか。
そこで必要になるのが探索的な調査です。探索的な調査とは、問題をより深く理解する、問題の特性や要因を明確にする、漠然としたアイデアを具体的な調査課題にまとめるといった目的で行う調査です。ここでは、探索的な調査について詳しくご紹介し、実施方法や実施に必要な調査手法についてご説明します。
探索的な調査は、ある問題について徹底的に理解するためのツールであり、それを行って初めて、膨大な回答を統計的推定が可能なデータへと数値化することが可能になります。
探索的な調査は、定義があいまいな問題、十分に調査されていない問題など、あまり理解していない問題について行う調査です。グラウンデット セオリー アプローチ(GTA)、解釈的調査とも呼ばれるこの手法は、結論を導き出すことではなく、洞察を集めて今後行う詳細な調査の土台とすることを目的とします。探索的な調査で得られた知見をもとに、今後の調査に向けた研究仮説と質問を作成し、必要なデータを絞り込むことができます。探索的な調査を最大限活用するためには、偏見を持たない柔軟な姿勢で臨み、状況に応じていつでも調査手法や方向性を変更する用意がなければなりません。
そう考えた場合、選択回答形式の質問を作成するなら、回答者が思いつくであろう回答をすべて網羅した選択肢を提示する必要があります。
自分の頭の中だけで考えた回答選択肢を提示して回答者に無理やり選んでもらうことは、代理回答バイアス(調査者に起因する厄介なバイアス)の主要な原因の一つです。「その他(具体的にご記入ください)」という選択肢を追加すれば、選択肢でカバーできなかった回答を拾うことができますが、その多くは統計に含めることができず、選択回答形式で質問した意味がなくなってしまいます。
さらに、探索的な調査を行わずにアンケートや質問を作成すると、調査の目標自体が間違った方向に進んでしまう可能性があります。たとえば、経営するレストランの弱点を特定・改善することを目的に、フィードバックアンケートを作成するとしましょう。レストランでの接客・メニュー内容・食事の質について、顧客に満足度を評価してもらうことに決めます。しかし、「接客・メニュー内容・食事の質」で大事な項目が揃ったように思えても、実際には、たとえばレストランの雰囲気や立地など、まったく別の点に不満を感じている顧客がたくさんいるかも知れないのです。
探索的な調査について深く理解するために、その特徴を見てみましょう。
本質的に構造化されていない。探索的な調査では、選択回答形式の質問のような、構造化・標準化されたデータ収集ツールは使いません。なぜなら、構造化されたツールでは、収集できるデータの性質が限定されるからです。自由形式の質問のように構造化されていない方法を使えば、さまざまな側面について調べることができ、予想もしなかった奇抜な情報が得られる可能性があります。
低コストでインタラクティブ。探索的調査手法は、一般にコストがかからず、簡単に実施できます。同時に、調査者が被験者に詳しい情報の提供を促したりするため、多くのやり取りが発生します。
場合によっては時間がかかる。探索的な調査は、新たな洞察や詳しい情報を求めるため、時間がかかる可能性があります。最も時間がかかるのは、適切な対象者を探す作業や、必要なレベルの情報を提供してくれるよう促す作業です。アンケートの利用を考えている場合は、SurveyMonkey Audienceを使えば数分で適切な対象者が見つかります。
対象者をアンケートパネルにまとめ、(数ヶ月ではなく)数分で洞察が得られます。
「なぜ」ではなく「何」に焦点を当てる。探索的な調査では、「何が問題か、何が目的か」といった問いの答えが見つかります。現象を説明すること(説明的な調査の主な目的です)ではなく、解明することを目的としています。
通常は質的だが、量的な場合もある。探索的な調査は、標準化された方法を使わないため、本質的には質的調査です。しかし場合によっては、アンケートと実験を利用して大規模なサンプルから量的データを集めることも可能です。
プロセスの第一段階。通常は、まだ調査をまったく行っていないか、調査を行ったが明確な答えが見つからなかった、という状況で探索的な調査を行います。そのため、探索的な調査が、長い道のりの第一歩ということになります。探索的な調査には、説明的な調査か、構造化されたデータ収集ツールを使った調査が続きます。探索的な調査を行う際、結果の評価に役立つようないくつかの仮説を用意しておくと、調査結果をスムーズに評価して詳細な調査に進むことができます。
決まった手順がない。探索的な調査を行うための絶対的なルールはありません。調査が必要な状況であれば、どんな方法でも、また、どんな方法の組み合わせでも、データを集めることができます。大切なのは、柔軟で実利的、かつオープンマインドな姿勢で調査に臨むことです。
探索的な調査を適切に実施すれば、良質な情報を豊富に得て、その後のアンケートで調査すべき重要な問題を特定できるだけでなく、調査プロジェクトのバイアスを大幅に減らすことができます。以下で、プロジェクトに探索的な調査を組み込むさまざまな方法を見ていきましょう。
プライマリーリサーチとは、詳しく調べる必要のある特定の問題について、調査者またはその代理人が実施する調査を指します。プライマリーリサーチ手法で探索的な調査を行う場合には、次のような戦略が使えます。
フォーカスグループでは、ターゲット層の条件に合った8~12人の人を集めて、調査のテーマに沿った具体的な質問をします。場合によってはセッション中にインタラクティブな演習を行い、その内容に関してフィードバックをもらう場合もあります。これは調査のテーマによって異なり、たとえばファーストフードチェーンの商品を試食する、禁煙キャンペーンの広告を見る、などが挙げられます。
フォーカスグループは、探索的な調査の中でも広く実施されている手法で、あるトピックについて回答者がどう考えているかを大まかに把握できます。オープンな形で自然に話し合いができるため、短い時間で多様な見解を得ることが可能です。
専門家アンケートを行うと、自分があまり詳しくない分野の専門家から情報を入手したり、専門家にその知識を披露してもらう自由を与えることで膨大な量の情報を集めたりできます。たとえば、環境問題に対する一般大衆の姿勢や意識について調査を行うことを任された場合、環境問題の権威を対象にした専門家予備アンケートを作成します。このアンケートでは、さまざまな側面から検証するために、自由回答形式の質問を幅広く行います。
アンケートに含める自由形式の質問は、どれも本質的に探索的です。回答者に好きに答えてもらうのですから、トピックについて予想していなかった洞察を得ることができます。多数の回答者を対象としたアンケートに自由形式の質問をいくつか含めると、まとめにくくなり、整理に時間がかかりますが、今後の調査に役立つ貴重な傾向や意見が示唆される場合があります。
たとえば、ニュースサイトを運営していて、ユーザーに「当サイトの中で最も改善して欲しいと思う点はどこですか」という自由形式の質問をしたとしましょう。回答を分析した結果、最も多くの人に言及されたのは次の3点でした。
1) ナビゲーション
2) 情報の質
3) デザイン
今度は、この3つのトピックに焦点を当てて新しいアンケートを作成し、選択回答形式の質問を使ってサイトに対するユーザーの意見を数値化することができます。
ガイド付きの手法とAIベースのインサイトを組み込んだ柔軟なソリューションで、重要な動向をすばやく発見しましょう。
観察調査では、質的手法や量的手法、またはその両方を使って、被験者や調べたい現象を現場で観察します。通常は、被験者と直接やり取りすることはありません。たとえば、新しい小売製品の配置戦略を立てたいなら、地元のスーパーで買い物客が通路や商品棚の間をどのように移動しているかを観察します。買い物客が各通路に滞在している時間を測定したり(量的アプローチ)、店舗内をどのようなルートで歩き回っているかを記録したり(質的アプローチ)して、その観察記録を基に次の調査を計画します。
セカンダリーリサーチ手法では、すでに存在しているデータを分析します。データは、自然発生的なもの(eBayで特定の商品がこれまでいくらで売れたか、など)もあれば、他の人・団体が別の目的で収集したデータのこともあります。
調査のテーマを決めるとき、これまでに誰も調べたことがないテーマを思いつくことはまずありません。それだけでなく、アンケートや調査を計画するときは、すでにあるものを作り直さないようにしましょう。どんな調査戦略であれ、すでに行われた類似の調査に目を通し、その結果から学ぶことは有益です。会社がこれまでに実施した調査については、調査目標の立て方を示唆してくれる無料の教科書だと考えましょう。たとえば、2回目の顧客フィードバックアンケートを作成している場合は、1回目のアンケートを確認して、最も役に立つ情報をもたらした質問を新しいアンケートでも再利用します。
外部データのセカンダリーリサーチも調査の設計を完璧に仕上げるうえで役立ちます。他の組織の調査プロジェクトだけでなく、ブログやフォーラムのようなソーシャルメディアも、調査テーマと関係のあるトピック・意見・行動を把握する際に参考になります。セカンダリーリサーチの主要な情報源には、次のようなものがあります。
文献調査では、教本・業界誌・雑誌などの出版物からデータを収集します。情報がハードコピーで提供されている場合もありますが、インターネットでの調査も可能です。たとえば、会社のサステナビリティ宣言を作成する場合なら、年次報告書をインターネットで発表している企業が多いので、同業他社の年次報告書を参考にすることができます。
インターネット上の情報源としては、他にも統計情報や競合他社のサイトなどが挙げられます。また、ソーシャル メディア プラットフォームでは、消費者が自社製品や類似製品について話題にしている可能性があります。オンライン調査は最も安価で手軽な調査方法と言えます。
探索的な調査はさまざまな方法で実施できますが、SurveyMonkeyでは次のような3段階のアプローチをお勧めしています。
まず、解決したい問題、扱いたい調査課題を明らかにします。それほど具体的でなくてかまいません。探索的な調査では、詳細を調べるのではなく、知識や洞察を得るのが目的です。
調査で得られた結果を基に、仮説を立てます。たとえば、自社製品が競合製品と比較してどう評価されているかを知りたいとします。その場合、まず探索的な調査を通じて顧客がどの製品を競合製品ととらえているかを調べ、それに基づいて自社製品と競合製品の相対的な評価について仮説を立てます。
予備的な調査で得た洞察に基づいて、さらなる調査を実施します。上記の例なら、仮説を検定する目的で市場調査アンケートを行い、複数の製品に対する顧客の評価を調べましょう。
探索的な調査にはさまざまな長所があります。
他の調査方法と同様に、短所もあります。
探索的な調査の内容・目的・実施方法をご覧いただきました。調査課題がすでに手元にあるなら、SurveyMonkey Audienceで実施に役立つパネルをあっと言う間に設定できます。今すぐ始めましょう。
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