AI新時代において、人事のプロが従業員の採用・維持・エンゲージメントを管理している方法をご紹介します。
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すべての企業にとって、最も重要な財産は従業員です。従業員は会社の顔、ブランドアンバサダーであり、顧客や市場との友好な関係を築くカギでもあります。
優れた人材を見つけ出し、採用し、維持するのは大変な仕事です。社内運営を改善するべく常に管理し、トレンドを追うために社外に目を向ける能力を要します。才能の見極めから魅力的な福利厚生の提供まで、DEIの価値を理解したり、AIの影響を予測したり、人事のプロは会社が選ばれるためのあらゆる側面を把握しなくてはなりません。
新型コロナウィルス収束後の職場環境と、変化の激しい労働市場は、人事の仕事をますます複雑なものにしています。こういった変化に人事チームはどのように対応しているのでしょうか。
SurveyMonkeyでは、人事の状況について確認するために、直接情報源にあたってみることにしました。米国の人事担当に対して行った最近のアンケートでは、楽観している点、懸念点、人事チームが直面している最も重要な開発に関する考えなど、人事業務の状況が理解できます。詳細について、ぜひ読み進めてください。
今まで人事は、職場の劇的な変化や対立的・感情労働、予測不可能な市場プレッシャーのかじ取りをする必要に迫られてきました。だからこそ、一流企業はスキルの高い人材を育成し、エグゼクティブレベルの人事リーダーを雇用して役員会にも参加させるのです。こうした企業にとって人事は組織の生命線であり、意思決定の重要な一部であり、すべてのレベルにおける付加価値でもあります。
しかし、このような話がすべての企業に当てはまるわけではありません。SurveyMonkeyの調査によると、人事に対する感覚とその影響を及ぼす能力には、会社間で分断が見られます。自社の経営陣が人事は成功文化にとって不可欠だと考えている、と答えた人事担当者は約半数(53%)で、残りの担当者は、経営陣が人事を単なる運営機能とみなしていると回答しています。
たとえば、人事が企業文化に及ぼす影響を見てみましょう。人事担当者全体の約3分の2(67%)は、職場環境に影響を及ぼす決断を下す主要な役割は、会社が担っていると答えた一方で、人事に若干の影響力があると答えたのは32%に過ぎませんでした。
ところが人事が重要視されている会社と運営機能とみなされている会社の違いを見ると、その差は著しく開きます。人事が重要視されている会社では、72%が職場環境の醸成に人事が主要な役割を果たしていると答えた一方で、人事が運営機能としか見られていない会社では61%でした。
また、パンデミックが人事チームに及ぼしたより大きな重要性を見てみましょう。人事担当者全体の67%が新型コロナウィルスの発生以来、人事部が従業員体験に与える影響は大きくなったと答えましたが、この数字は経営陣が人事を重要視している会社ではより高く(73%)なり、そうでない会社では低くなっています(61%)。
同様に、人事担当者全体の10人中ほぼ7人(68%)がパンデミックの開始以来経営陣から高い期待をかけられていると答えましたが、この数字は人事が重要視される会社では73%に達しました。
人事がより大きな役割を果たしているにも関わらず、企業は従業員へのサポートを置き去りにするというリスクを冒しています。人事担当者の5分の1(19%)は、会社は従業員に十分に投資していないと答えています。
人事が運営機能とみなされている会社の人事の約4分の1(24%)は従業員への投資が足りないと答えましたが、この数字は、成功文化を作成する際に人事が重要であると経営陣が考えている会社では非常に低くなっています(15%)。
人事にとっては、あらゆることが重要です。SurveyMonkeyの調査では、8点の指標中5点が重要と挙げられ、人事担当者には一点のミスも許されないことが示唆されています。採用、エンゲージメント、トレーニングから維持まで、人事は従業員のライフサイクルの全側面が確実に機能し、良い結果を生むことを保証する必要があります。
SurveyMonkeyの調査では、人事担当者の46%が従業員パフォーマンス管理をリストのトップに挙げました。僅差で採用と維持(45%)が続きますが、回答者が同じ程度大切だと捉えている人事の指標は、他にもあります。
人事組織が重要視される会社と運営機能とみなされる会社の差異は、この結果においても顕著に表れています。
人事が重要視されている会社では、2点の指標がとりわけ重要だと思われていました。トレーニング・コースフィードバックと従業員パフォーマンス管理の両方が51%で、重要な対策リストのトップになったのです。人事がただの運営機能とみなされている会社では、この2点は平均以下の評価で、それぞれ30%と41%でした。
ここ数年は従業員にとっても人事チームにとっても困難でした。パンデミック、大規模な市場調整、テクノロジーのような主要セクターにおけるリストラが、巨大組織や小規模ビジネスを直撃したのです。
多くの従業員が目的を持って働いているのは驚きに値するかもしれません。8,874人の米国の労働者が答えた2023年のCNBC SurveyMonkey労働力調査では、従業員の91%が自分の仕事は有意義であると回答しました。さらに、従業員の85%は仕事に満足していて、約4分の3(73%)は十分な報酬を受け取っていると答えています。これらの数字は前の調査と一致しており、変化に関わらず従業員は満足していることを示します。
人事は一方で違う側面を見ています。従業員の離職は引き続き企業にとっての問題で、人事チームは現実的な懸念を抱いています。人事担当者の3分の1(32%)しか、離職に関する自社の対応は「非常に成功している」と答えていません。
離職の理由はさまざまであり、その会社における人事の役割によっても異なります。全体として、リストのトップは報酬で、人事担当者の3分の1以上(35%)が離職理由として挙げています。
ところが、人事が重要視されている会社では、燃え尽き症候群が最大の理由と見られていて、人事が運営的な役割しか果たしていない会社の22%と比べて36%にも上ります。人事が重要な役割を果たさない会社ではまた、やりがいのなさが2倍にもなりました。
従業員の声は、ほとんどの企業で反映されています。人事担当者は一貫してフィードバックを求め、多くの場合、頻繁に尋ねています。SurveyMonkeyの調査では、人事担当者の85%が、自分の会社には従業員が定期的にフィードバックを提供できるプログラムがあると述べ、人事チームの45%は四半期ごとにフィードバックを収集していると答えました。フィードバックをほぼ集めないと答えたのは、少数の会社(10%)に過ぎませんでした。
フィードバックは活用されています。人事担当者の3分の1(33%)は、従業員フィードバックが従業員体験に関わる決定の要因になっていると答えました。SurveyMonkeyの研究では、決断が下される際に、従業員フィードバックは経営陣(34%)やマネージャー(32%)と同じくらいの重みを持っています。
フィードバックを収集する最大の理由は従業員エンゲージメント(48%)で、人事を重要視する会社(59%)では、そうではない会社(35%)に比べてはるかに高くなっています。
人事チーム全体にとって、フィードバックの収集には困難が伴います。人事担当者の過半数(59%)が適切な量の従業員フィードバックを集めていると考えている一方で、4分の1以上(29%)は十分ではないと答えています。
その理由はさまざまですが、エンゲージメント、サイロ化した情報、洞察の欠如などが主な問題です。
人事担当者が懸念するもう1つの点は、正直なフィードバックを集めることです。SurveyMonkeyの調査では、人事担当者の72%が、従業員が職場体験について、率直で真摯なフィードバックを提供しているか懸念していると答えています。このような問題は、人事が重要視されていない会社でより顕著です。人事担当者の80%が婉曲的なフィードバックを懸念していて、人事が重要な役割を担う会社では64%でした。
報酬は、優秀な人材を惹きつけ、維持するために常に重要です。有能な人材を採用し、従業員を維持する点に関しては、給与と福利厚生が物を言います。
とはいえ、人事チームにとっては、他にも投資すべき領域があります。SurveyMonkeyの調査によると、すべての会社の人事担当者にとって、従業員トレーニングが重要度において報酬を上回ります。
人事担当者の過半数(55%)は、従業員体験という点で考えると、投資すべき最重要領域はトレーニングだと考えています。僅差で続くのが報酬(54%)とワークライフバランス(51%)です。
人事が重要視される会社では、従業員に投資すべき最重要エリアはワークライフバランスで、これらの会社のリストのトップ(56%)になっており、トレーニング(55%)と報酬(53%)を越しています。
2023年のCNBC SurveyMonkey労働力調査では、従業員が柔軟性のある職場オプションに惹かれていることがわかります。新型コロナウィルスで従業員が在宅業務をするようになってから3年以上が経過し、その56%は出社している従業員の方が、キャリアアップのチャンスに恵まれるだろうと予想しており、これは楽観視されていた2021年10月より10ポイントも高くなっています。
ほぼ半数(49%)の人事担当者は、リモートまたはハイブリッドな職場を提供できることが会社の採用力に大きな影響を与えると答えました。
これは人事が主要な役割を担う会社ではさらに高くなり、人事担当者の58%が採用にとってハイブリッドまたはリモート勤務が重要だと答えています。人事が運営機能とみなされる会社では44%です。
このような学びは優秀な従業員を維持したい人事チームだけでなく、採用担当者にも大きな影響を及ぼします。多くの場合に内定者が仕事のオファーを受諾する要因となってきた高収入の魅力は、もはや人事チームが使える唯一のツールではなくなったのです。
ダイバーシティ、公平性、インクルージョン(DEI)は、ほとんどの企業の経営陣にとって重要視されるようになりましたが、幸いなことに、人事がその点に最初に注目しました。
多くの会社で、人事はDEIのベストプラクティスを、採用から報酬や維持まで、会社のあらゆる側面に取り入れてきました。対処すべきDEIの問題はいまだ数多くあり、今後もさらに増えるでしょう。
SurveyMonkeyの最近の調査から、いくつかの統計をご紹介します。
これらの統計は、人事チームにとっていくぶん厳しい状況を描き出しています。たとえ公平性が存在するとしても、さまざまなグループにとって、従業員の不公平という認識が全面に押し出されているのです。とはいえ、SurveyMonkeyの最近の調査に基づく朗報もいくつかご紹介します。
優秀な人材の採用は人事担当者にとって重要な指標で、DEIは採用において大切な役割を担います。今こそ、企業が国際的に多様で、さまざまな属性に対してインクルーシブな労働力を揃えるべき重要な時期です。企業はさまざまなスキルセット、性別、年齢、人種、アイデンティティの従業員を見つける必要があります。
人事担当者の約半数(48%)は、優秀な候補者の採用でDEIが大きな影響を持つようになったと述べています。人事が主要な役割を果たす企業ではこの数字はさらに高く、人事担当者の55%が、DEIは採用に大きな影響を与えるようになったと答えました。
企業がDEIに関してどの程度意見を求めるかはさまざまであり、人事チームの間でも、それが通常のベストプラクティスなのか、あるいはやや場当たり的に実装されているのかで意見が分かれます。調査結果は、企業内で人事がどのように認識されているかによっても大きく異なります。
人事担当者の5人に1人(20%)は、自社において職場でのDEIに関する従業員のフィードバックへの対応が不十分であると述べています。女性の人事担当者は、男性の人事担当者よりも、自社がDEIに関する従業員フィードバックに十分に対応していないと回答する傾向がはるかに高くなっています(男性の17%に対して24%)。一方で男性の人事担当者は、女性の人事担当者に比べて、自社がDEIに力を入れすぎていると報告する傾向が高くなっています (女性の15%に対して28%)。
人事担当者の約4分の1(26%)はDEIのプライオリティについて決断を下す際に、常に従業員の意見を聞いていると答えた一方で、同じ程度(23%)の人事担当者はほとんどまたは全く尋ねないと答えました。人事が主要な役割を演じる企業では、「常に」という回答数は3分の1以上(34%)に上っています。
最も興味深い統計の1つは、DEIに対する偏見ではなく、実際にデータがどのように処理されるかの可能性かもしれません。データがサイロ化または分散していると報告した企業のうち、自社がDEIデータを尋ねていると答えたのはわずか66%でした。これに対し、従業員の洞察が従業員体験の統合ビューに集約されている企業では、DEIデータを尋ねると答えた企業は81%でした。
AIは多くの従業員の心に不安の影を落としています。自分の仕事が時代遅れになったり、重要性が低下したり、完全に消滅したりするのではないかと懸念しています。CNBC SurveyMonkey労働力調査では次の点が明らかになりました。
採用やパフォーマンス評価、より機密な人事業務においてAIをどのように活用できるかについて多くの議論が交わされている中、SurveyMonkeyでは人事担当者が実際にどう考えているのかを知りたいと考えました。
驚くことに、人事担当者の大多数がAIを受け入れており、ほとんどはAIを自らの役割にとって重要なツールとみなしていました。
人事担当者の10人中6人(62%)は、過去3ヶ月以内に少なくとも週に1回は人事業務にAIを使用しています。半数(53%)は、昨年と比べてAIが人事ストラテジーにとってさらに重要になったと回答しています。
AIが最も影響を与える領域はどこでしょうか?人事担当者はほぼ全員が「全て」と答えます。SurveyMonkeyの調査では、人事チームはAIが人事のあらゆる領域に同レベルの影響を及ぼし、どの領域も主要なユースケースから大きく遅れをとることはないと予想しています。
人事担当者のうち、自分の仕事がAIに置き換えられることを懸念しているのはわずか10人中2人(19%)で、実際、大多数(59%)はAIが仕事の効率化に役立っていると回答しています。
AIの活用に関して、人事担当者が最も期待しているのは生産性の向上です。10人中ほぼ4人がAIによってより高度なタスクに集中できるようになると考えており(38%)、35%がAIによって反復タスクが自動化されることを期待しています。
人事はまた、AIによって仕事が楽になるだけでなく、より多くのデータへのアクセスを提供することで、パフォーマンスが向上することに大きな期待を抱いています。3分の1以上(36%)は、AIが従業員のパフォーマンスについてデータに基づいた理解を提供してくれることを期待しています。
AIに対する喧伝にもかかわらず、人事担当者はAIが人事に与える影響について懸念も示しており、特にAIの力をどのように制御するかについての知識が不足していることを心配しています。
3分の1以上(37%)は、AIを効果的に使用する方法に関する知識不足が、この技術を利用する際の主な課題であると回答し、24%はAIツールに活用するデータが十分でないことを懸念しています。また、個人レベルにおいては、人事担当者の28%がAIによって仕事が保証されなくなることを不安に感じています。
人事が懸念していない点のひとつは、採用とそのプロセスにおけるバイアスです。AIによってバイアスがかかることが大きな問題だと考えているのは4人に1人(25%)に過ぎませんでした。些細な問題だと考えている人が最も多く(45%)、全く問題ではないと答えた人も31%いました。
人事が企業の将来の労働力の構築にどのように貢献できるかについては、まだ学ぶべきことはたくさんありますが、確かなことが1つあります。それは、成功する職場は従業員のフィードバックによって促進されるということです。人事を優先する組織は、従業員のパフォーマンスやトレーニングをサポートし、定着率の向上と離職率の低下というメリットを享受する可能性が高くなります。
人事にとって最高のスタート地点とは、尋ねて、聞いて、対応することです。
従業員を知り、ライフサイクルのあらゆる段階で何を重視しているかを理解しましょう。候補者としての体験からオンボーディング、エンゲージメント、定着インタビュー、オフボーディングまで、人事プログラムや福利厚生、コミュニケーションに関する将来の意思決定に役立つフィードバックを収集する理由は常に存在します。
個々の従業員のニーズを明らかにし、会社全体のプログラムやプロセスに広く適用できるフィードバックを、継続的に収集しましょう。トレーニングプログラムやワークショップの各セッションの前、最中、後に実用的なフィードバックを収集することで、より効果的に作成できるようになります。頻繁かつ特定のタイミングで従業員に取り組むことで、比較できるベンチマークを得られます。
フィードバックを行動に移すことで、高いパフォーマンスの労働力を育成しましょう。全体的なパフォーマンスを理解することで、マネージャーの有効性を向上させ、学習ギャップに対応し、労働力を強化できます。従業員体験の各段階を360度多面に把握します。
調査方法:SurveyMonkeyの調査は、2023年8月25日から9月5日の間に269人の人事担当者を対象に実施されました。回答者はオンラインの無作為パネルから選ばれました。¹
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