最近ビジネス界でホットな話題の1つが、職場の多様性です。新たな流行が台頭すると、定着するかに見えていずれ次の大きな流行に取って代わられのが常ですが、多様性への投資はすっかり浸透したようです。最近の求職者はすでにこの視点を求めています。67%の求職者が、見込みのある雇用主を見極める際に多様性は重要な要素だと回答しています1。他にも、イノベーションの推進、収益増加、事業の成長などの点でも、多様性はビジネスに良い影響を与えます。
ところで、私たちが職場の多様性について話すとき、具体的にはどういうことを意味しているのでしょう。最も基本的な定義は、チームのメンバー構成があなたの周りの社会の一般的な構成を反映している状態です。ごくシンプルな概念ですが、その実現には、通常、昔から社会の多くの集団を排除する原因となってきた、組織的・個人的偏見を克服するために、意図的かつ集中した取り組みが必要です。
真に多様性に富んだ職場の実現の鍵は、個人や集団に対する偏見のない雇用慣行、すなわち、多様性に富んだダイバーシティを尊ぶ採用です。常に実績に基づいて求め得る最良の候補者の発見に努める多用性に富んだ採用は、応募要件を満たしたすべての応募者がその生い立ちや経歴、職歴などにかかわらず等しく選ばれる機会を得られるように体系化されています。多様性に富んだ採用が広がって根付いて行くにつれ、真に平等な関係を職場に構築するうえで重要な一段階として認識されるようになってきました。
より大きな社会の構成を反映することで、あなたの組織が人びとの違いを理解して受け入れ、尊んでいることを多様性に富んだ人材が周囲に知らせてくれるようになります。人材確保における多様性には、経験、人柄、学歴、スキルセット、知識ベースはもちろん、年齢、人種、民族、性別、宗教、障がい、性的指向が関連しています。
多様性には2種類あり、どちらも等しく重要です。まず、先天的多様性とは人口学的特性を指し、年齢、人種、性別などが含まれます。そして、後天的多様性とは時間をかけて獲得した要素を指し、学歴、経験、スキルなどが含まれます。
85%のCEOが、多様な人材によって自社の最終利益が改善したと言います1。Forbes Insightsは、人材の多様性とインクルージョンが社内のイノベーションと事業の成長を推進するために重要な鍵であることを明らかにしました。多様性に富んだ経営陣のいる企業の収益は19%高くなっています1。多様性に富んだ企業は業界を先導する可能性が1.7倍高くなります1。500社以上を対象に実施されたある調査では、性別と人種の多様性が1%高まるごとに売上収益がそれぞれ3%と9%伸びる相関関係が確認されました2。
こう考えてみるとこれらすべてのパフォーマンス向上をもたらすメカニズムは、直感的にも経験的にも腑に落ちるものです。幅広いスキルと経験を網羅しているチームなら、どんなビジネス上の課題に直面しようともより効果的に対処できるでしょう。グローバルかつインターナショナルで多様な言語や文化に通じていればより多くの市場に進出できるだけでなく、自身が所属するコミュニティ全体に働きかけられるのです。地元、地域、全国、そして全世界に。
少数派も含んだ多様なチームは持ち寄る情報や視点も幅広く、結果としてより良い意思決定と全体的な結果につながります。また、問題解決やイノベーションを妨害する可能性のある「エコーチェンバー」現象を回避することで、確証バイアスに陥る可能性も減らせます。
調査によると、多様なチームには次のメリットがあります2。
郵便室から重役室まで、そしてその中間のあらゆる場所、さらには役員室までも、これらの力学が働いています。McKinseyが行った分析によると、取締役会が多様性に富んでいる企業は有意に高い利益と株主資本利益率をあげています2。
他の核となる構想と同様に、多様性に富んだ採用は戦略的アプローチによって最も成功の確率が高まります。実際、ビジネスを展開する地域と顧客ベースを反映した組織人材の確保を目指す、より幅広い多様性・公平性・インクルージョン(DEI)戦略の一環となっていることが多々あります。
多様性に富んだ採用戦略には、まず目標を設定してやるべきことを計画し、説明責任を検討します。目標までの進捗状況と営業成果への影響を測れる指標を確立します。また、多様性に富んだ受容的な文化を育む行動が報われる仕組み作りを行いましょう。
多様性に富んだ採用は、単に人事機能を修正するだけの問題でもなければそれ自体が目的なのでもありません。最終的な目標は組織内の全員が組織への所属意識を養えるようにすることであり、多様性に富んだ社員名簿を作成することだけでは不十分なのです。先に述べた収支上のメリットは、会社全体に偽りのない多様性の文化が育ったときにのみ完全に実現するのです。これを念頭に置いて多様性に富んだ採用戦略に取り組むことで、影響が現実のものとなって長期的な効果を発揮してくれることでしょう。
立ちはだかる障壁を乗り越える準備をしてください。いやむしろ、自ら障壁を探しに行きましょう。人材獲得の専門家の70%が、高まる職場の多様性が直面する課題は新しい取り組みに難色を示すリーダーだと指摘しています3。
あなたの目標の1つは、組織の全レベルと全支店で多様性を高めることかもしれません。しかし、行動計画を立てる際には、ビジネスのどの領域に最も注目すべきかを検討したうえで、それに従って具体的な目標と作戦を練る必要があります。たとえば、技術分野の女性の代表を15%増やすことや、上級管理職の人種的多様性を30%高めることを目標として設定するのです。
採用とオンボーディングの各プログラムに対する多様性導入の進捗状況(人材募集ルートの多様性の変化など)を測る鍵となるパフォーマンス指標は、自ずから作ることになるでしょう。しかし、そこで立ち止まってはいけません。会社が多様性とインクルージョンを導入したことに対する従業員の満足度と定着率、新規採用者に対する経営陣の満足度、主要な業績に直結する従業員のパフォーマンス指標といった、それに伴うダウンストリームの結果も監視できるような指標にする必要があります。
無意識バイアス(あるいは暗黙のバイアス)は、意識的には抗っていてもステレオタイプを強化するように振る舞う原因となります。親近感バイアスによって、人は自分と似ている他者に引かれます。多かれ少なかれ無意識バイアスと親近感バイアスが採用プロセスに影響することを予め想定して、これらのバイアスを意識化して説明責任を負うためのあらゆる機会を逃さないようにしましょう。
求職方法や言語、応答しやすい(または応答しにくい)メッセージに関して、人によってどのように異なるかを知りましょう。心から組織に歓迎しているのかどうかが候補者に伝わる、ニュアンスや「微細な」シグナルについてよく理解することです。そして、学んだことはすべて採用プロセスのあらゆる段階で実行しましょう。
採用段階で多様性を高めるためには、応募者全体の多様性も高めることが不可欠です。それはつまり、有望な人材を集める方法自体の変化も求められているということです。いつも使っているツールと戦術を見直し始めると、これまで見逃してきた人材集団に働きかけられるようにする調整がいかに多く可能か、きっと驚くことでしょう。
皆様は恐らく「男性は応募要件の60%を満たせば応募し、女性は100%満たさなければ応募しない」という頻繁に引用される統計を、どこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。つまり「5年以上の経験者」という応募条件の仕事は、それ以下の経験年数だとしても全体的な能力としては応募資格があると確信している男性の目を引くものです。しかし同じ条件でも女性からは、他に発揮できる能力の有無にかかわらず5年以上の経験が記載された履歴書しか届かない事になります。もし「5年」というのが深い意味の無いおおまかな数字なら、つまり「4年しか経験していない人でも獲得しうる一般的な知識と経験がある」という程度の意味なら、応募条件として実際に求めていることを明確に表現するにはどうしたらよいか、もう一度ご検討ください。
一般的に言えば、求人票を監査して、深い意味のない要件、文字通りに受け取られた場合にあなたが求めている多様な応募者を排除してしまうような要件を削除しましょう。そして、求人票にもその他の応募者向け関連資料にも、性別を意識させるような文言や排他的な文言が含まれていないことを確認しましょう。たとえば、エリート大学の言い換えである「一流校」や「アイビー・リーグ」の学歴を求める代わりに、特定分野の学位を求めてみてはどうでしょう。
人材を確保する方法の方向性を変えて、より多様な応募者を集めるうえで参考になるデータを少しご紹介します。仕事を探す際に2
いつまでも同じ事を同じ方法でやっていても、同じ結果しか得られません。これまで見逃してきた応募者に働きかけるには、別の場所で別の方法で探す必要があります。女性の名前や民族的な名字を含む検索パラメーターを構築しましょう。多様なメンバーが集う専門家の組織やネットワークをターゲットにしましょう。目標にしたい人口学的特性に属する既存の従業員に会社を宣伝するツールを与えて、求人広告をそのグループのネットワークで共有するように促してみます。学生とつながるために、学校やコミュニティグループと連携するチャンスを探しましょう。求めている背景の多様性をもたらしてくれる応募者に、インターンシップやCo-opとしての働き口を提供します。
多様な応募者を惹きつけて定着させるために役立つ取り組みの1つが、生きいきと過ごせる環境作りです。特定のニーズをサポートできる柔軟性を備えるため、方法を探しましょう。たとえば、通勤時間の長さは従業員の離職率を予測する重要な因子ですし、ダウンタウンのオフィスの場所からの距離はより多様性に富んだ住宅地と相関関係があります。就労時間を柔軟にしたり在宅勤務の選択肢を採り入れたりすることで、考慮すべき問題から通勤の変数を取り除けるため、あなたの会社の社員になることが多様な応募者にとってさらに魅力的なチャンスとして映るようになります。
休暇を定めている規定を見直して、所用を伴う休暇をもっと取りやすくすることを検討しましょう。また、応募者のコミュニティへの参加を支援するために、柔軟性も十分に確保します。
経営陣は、多様性やインクルージョンを妨害している、あるいはその効果を薄れさせていると従業員が感じる方針について、従業員が声を上げられるように奨励してすぐに理解できる態勢を取ってください。すべての個人が自身の体験と偏見の観点を通して職場を体験するものです。そして、オープンで率直な対話こそすべての人の所属意識を養う、最も強力なツールです。
アンケートによると、求職者の83%が仕事を引き受けるかどうかを決める際に雇用主の多様性に対する取り組みを考慮したと回答しており3、ほとんどの求職者は多様性に取り組んでいると主張する企業を信じています。あなたの会社はうまくその取り組みを伝えられているでしょうか?雇用主のブランドはアップデートされていて、多様性とインクルージョンが従業員の価値ある提案に影響を与えていることを明確にアピールできているでしょうか?採用マーケティングに適切に投資できていますか?
資格のある多様な応募者を大勢惹きつけることが第1段階でした。次は、スクリーニングの段階で偏見を持ち込まないことが課題になります。もし偏見に左右されれば、せっかくリクルート段階で成し得た進歩が水の泡になりかねません。
雇用前の評価時に適用される伝統的な基準(以前の雇用主、学歴、専門家のコネクション)は、応募者募集ルートで「反多様性」メカニズムとして作用します。先に述べたように、同じ事をしていては同じ結果しか得られません。ここでの目標はいつものパラメーターを飛び越えて、あなたが日頃目にしているのとは異なる背景や経験を持ち込んでくれる広範な応募者を集めることです。
解決方法はあります。雇用前の人格評価ツールの利用をご検討ください。マイノリティ集団のメンバーであっても人格スコアに有意な差はなく、この雇用前人格評価を利用している企業は人種的により多様な職場を実現しています。
どんなに注意深く計画的に行ったとしても、100%偏見のないスクリーニングプロセスを実現するのは極めて難しいことに変わりありません。結局の所、私たちは所詮人間で、最も油断ならない偏見が無意識という形で現れるからです。このため、以前に増して多くの採用担当者が、履歴書を確認する前に匿名化するようになってきました。氏名、学歴、住所など、採用担当者の偏見を招きかねない情報を予め取り除けるソフトウェアが利用できます。
これと同じ原則は応募者面接の初期段階にも適用できます。応募者と話している際にすべての偏見を防ぐことは、非常に困難でしょう。この回避策として、応募者に予め個人情報を話さないように求めたうえで、文章による匿名化した会話を行う方法があります。両者が仕事に関連する専門的なパラメーターによって知り合うことに集中できると同時に、この段階で会話によって偏見を招く可能性のある要因を排除できます。
スクリーニングプロセスから偏見を排除するもう1つの方法として、人工知能(AI)の活用があります。採用管理システム(ATS)をプログラムして特定のスキルや経験を絞り込んでフラグし、テクノロジーに応募者の公平な分析をしてもらうのです。
最終決定段階に近づけば近づくほど、各プロセスで偏見を排除することが益々難しくなります。すでに各応募者のイメージができつつあるからです。無意識のバイアスが今にも入り込みそう...しかしここでも、バイアスを無力化するための追加のツールとテクニックがあります。
多様性に富んだ応募者が最終候補者名簿に載っているその人口学的特性を持つ唯一の応募者である場合、選ばれる可能性が大幅に下がることは十分に検証されています。多くの場合、その応募者は無意識のうちに象徴とみなされて、最終候補者名簿に載ったにもかかわらず最終的な検討対象から除外されるという、決定バイアスの犠牲になるのです。
多様性に富んだ採用戦略に対するこの最後のハードルを取り除くため「集団に2人いる効果」をうまく利用しない手はありません。1人孤立することや象徴とみなされるリスクを避けるため、比例する数の多様な応募者を最終候補者名簿に加えておくのです。リクルートとスクリーニングの各戦略が功を奏して応募者全体の多様性を高めてこのプロセスからバイアスを取り除けたなら、真に資格がありかつ多様性に富んだ応募者の最終候補者名簿の作成に大した問題は起きないはずです。
多くの人が長いキャリアの中ですら経験したことのないほど厳しい労働市場に直面して、雇用主は可能な限り最も優秀な人材を惹きつけて定着させようとベストを尽くしています。一方、応募者たちは真に多様なチームを実現している組織の一員になりたいと願い、確実に取り組んでいる企業からのオファーを粘り強く求めています。幸いなことに、先例に倣い、職場に多様性を実現した企業では、採用や定着率だけでなく収益、事業の成長、イノベーションといったその他の様々な主要な業績においてもプラスの効果が現れます。
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