質的調査は、顧客のニーズを満たしたり、顧客満足度やブランドロイヤリティを高めたりする際の第一歩です。
なぜなら、質的調査は、顧客の行動や嗜好、感情の裏にある理由を調べる調査だからです。会話をするのと同じように、顧客の理由を掘り下げ、量的調査だけでは得られない貴重な情報を入手することができます。
このガイドでは、簡単な6つのステップで独自の質的調査を実施し、顧客のニーズを正確に把握する方法をご説明します。
質的調査は、数値で測定できるデータを収集・分析する量的調査とは対照的です。数字からはわからない深いインサイトを提供する質的調査は、量的調査を補完するものです。あるいは、ソフトサイエンス(またはソーシャルサイエンス)とハードサイエンスの違い、と言うこともできます。
質的調査を単独で実施することもできれば、量的調査と組み合わせて質的データと量的データの両方を収集することもできます。質的調査では、通常、インタビューやフォーカスグループ、観察、回答を文章で記入してもらう自由回答形式の質問を使ったアンケートなどを実施して深いインサイトを得ます。
質的調査を行うときは、目標に合ったアプローチを使う必要がありますが、標準的なステップがいくつかあります。これらのステップは、独自のアプローチを作成するための指針となります。
調査の目的を明確に定義するには、SMART(具体的・測定可能・達成可能・関連性がある・期限付き)な目標設定と、調査で達成したいことを念頭に置きます。
具体的なビジネス上の問いに対する答えを見つけるなら、プライマリーリサーチが適しています。また、ある問題を深く理解したいなら、探索的な調査を行います。目的がはっきりしていればいるほど、この先のステップを適切に実行することができます。
質的調査で明らかにする問いには、次のようなものがあります。
関連トピック: アンケートの目標を設定する
仮説とは、質的調査の指針となる声明文であり、データで何を明らかにしたいかという調査の目標を表現したものです。仮説は、調査の方向性を示す「北極星」の役割を果たします。
たとえば、製品マーケターが、消費者が新製品を購入する際に最も大きく影響する要素は何かを知りたいとします。仮説を立てるには、調査の目標を検討し、仮の声明文を考案します。
この例では「新製品の最も魅力的な要素は、製品のパッケージとブランディングの2つである」という仮説を立てることができます。
もう1つの例として、クラフトビールの市場調査を考えてみましょう。クラフトビールの市場調査では、「ミレニアル世代のクラフトビール消費者は、新しもの好きで差別化を追求する傾向があり、フルーツビールやサワーエールのような個性的なフレーバーを好む」という仮説を立てることができます。
この仮説を指針として、ミレニアル世代を対象にフレーバーの好みに関するフォーカスグループを実施したり、特定のクラフトビールを選ぶ理由をアンケートで調べたりします。
以下で簡単にご紹介しましょう。
調査計画の種類だけでなく、調査の種類についても考える必要があります。通常、質的データを収集する際は、上に挙げた4つの調査計画のいずれかを選びます。効果的な調査質問についてブレインストーミングする前に、調査の方法を決めましょう。
質的調査の方法は、それぞれ異なるメリットを持ち、異なる調査目標に役立ちます。ここでは、調査を方向付ける質的調査の方法を7つご紹介します。
定義: インタビューは、市場調査や投票でよく使われる従来型の質的調査の方法です。インタビューでは、調査者が消費者を相手に1対1で会話を行います。
メリット:
用途: インタビューは、消費者の個人的な体験や動機、感情を調べるときに実施します。
定義: フォーカスグループでは、特定のデモグラフィック属性を基準として選択した少人数のグループが対象になります。訓練を受けたファシリテーターが会話の進行役となり、消費者の考えに関する詳しい情報を引き出します。
メリット:
用途: フォーカスグループは、トピックの微妙な部分を理解したいときや、新しい製品・アイデアに対する消費者の第一印象を知りたいときに実施します。
定義: 行動観察は、特定のグループまたはコミュニティの生活空間に入り込んで質的調査を行う手法です。対象者の振る舞いを観察することで、グループの動機や信念を理解します。
メリット:
用途: 行動観察の主な用途は、日常生活を観察することで文化の細かな違いを理解することです。
定義: ケーススタディでは、特定のグループや人、状況を分析し、事前に設定した命題や原則を検証します。トピックを批判的に検討し、ソリューションを提案することができます。
メリット: ケーススタディは、マーケティングにおける会社の価値提案を強化します。
用途: 多くの場合、問題の解決、重要な関係の特定、仮説の構築に使用されます。また、マーケティングにおいて製品・サービスの効果を立証する目的でも使われます。
定義: 観察調査では、消費者を普段の生活空間の中で観察します。
メリット:
用途: インタビューでは想起できないような普段の行動を観察したいときに使用します。たとえば、店舗で買い物をしているときに、購入する品が決まるまでにどれぐらい時間がかかったかなどを観察できます。
定義: テキストや動画、画像などの質的データを分析し、パターンやテーマを特定します。具体的には、質的データの中に特定の単語やフレーズ、概念が何回出現するかを数えます。
メリット: コンテンツ分析は、フォーカスグループなどの調査方法と比べて低コストです。
用途: 特定の要素の出現回数を計測し、その背景にあるメッセージやテーマを理解することが目的です。
定義: 談話を分析することで、さまざまな社会的文脈での言葉の使われ方を調べます。会話やインタビュー、文書を分析し、言葉を通じた社会的アイデンティティの形成や行動への影響について調べます。
メリット: テキストや会話を文脈の中で分析できる
用途: 談話分析は、特定のデモグラフィック属性によって力関係や文化、社会規範にどのような違いがあるかを理解する際に特に役立ちます。
場合によっては、質的調査だけでなく量的調査も実施したいことがあるでしょう。そのような場合、さまざまなタイプの量的調査の中から適切なものを選び、視野を広げることができます。質的手法と量的手法を組み合わせれば、詳細な記述を行い、それを統計分析で裏付けることができます。
調査の目標を設定し、検証したい仮説を立て、そのための手法を選んだら、次はいよいよ調査の実施です。質的データを効果的に収集するには、具体的な目的に合ったデータ収集方法を選ぶ必要があります。
各種の調査手法を比較した結果、アンケート調査を実施することに決めたとしましょう。オンラインアンケートは、メール送信やWebサイトへの埋め込み、SNSでのシェアが可能なため、最も費用対効果が高い方法と言えます。質的調査用のアンケート質問を作成するときは、回答者が自分の言葉で回答できるように、自由回答形式の質問を使いましょう。選択肢を用意すると、回答の内容が制限されてしまいます。
SurveyMonkeyでは、データ収集のプロセスが合理化されているため、質的データをすばやく収集・分析することができます。
「SurveyMonkeyでは、トレンドを簡単に発見し、情報をグラフにすることができます」とBill Wilson Centerの部門ディレクター・Laura Fosterは言います。
「さまざまな方法で結果のフィルタリングや集計したデータの表示ができるので、本当に便利です。それに、私たちは自由にフィードバックしてもらうために必ず自由回答形式の質問をしていますが、SurveyMonkeyなら質的データの中から簡単にテーマを見つけ出すことができます。」
インタビューまたはフォーカスグループを実施する場合は、参加者に描写的なインサイトを提供してもらえるように自由回答形式の質問を書き出しておきます。観察調査を選んだ場合は、一貫した観測が実施できるように基準を設定します。
次に、調査目的に合った参加者を集めます。参加者を選ぶときは、必ず調査の目的やデータの用途を説明し、同意を得るようにしてください。
特にインタビューまたはフォーカスグループを実施する場合は、参加者のために快適な環境を用意することが大切です。また、正しい回答があるわけではなく、率直な意見が聞きたいということを参加者に伝える必要があります。
質的調査の利点は、柔軟性の高さです。事前に用意しておいた質問を使用しますが、会話の中で出てきたトピックは、柔軟に掘り下げるようにしましょう。調査方法としてアンケートを選んだ場合は、回答に漏れがないかをモニタリングして、明確でない点がある場合は回答者にフォローアップします。
質的データを集めたら、今度はそれを分析し、仮説を支持するものかどうかを確認します。書き起こしやメモを読む、アンケートの回答を見直す、録音を聞くなどして、データを詳しく調べましょう。集まったデータの内容がつかめたら、さらなる調査に向けて、データセット内の発見事項をハイライトします。また、レポートの準備として分析内容を記録します。
質的データの分析手法の中でも広く普及しているのが、データセットに現れるトレンドのコード化(分類)です。コード化では、繰り返し出現する概念や言葉、フレーズ、テーマなどにラベルを付けることで、非構造化データを整理します。データを意味のあるカテゴリーに分類すれば、価値あるインサイトが得られます。
類似の回答をグループ化して、標本に関する包括的なインサイトを特定することもできます。これは、主題分析と呼ばれる手法で、参加者の視点を特定・解釈・理解したいときに使用します。
主題分析は反復的なプロセスであることを念頭に置きましょう。質的データ分析を行っていると、特定のテーマが繰り返し現れることがあります。それが、関連性のある重要なテーマである場合は、分析プロセスをやり直してデータをもう一度確認し、新たなインサイトを探します。
最後に、発見事項をまとめて、仮説に結びつけます。発見事項を発表するときは、次の点に注意しましょう。
6つのシンプルなステップで質的調査を実施し、ターゲット市場の理解を深めましょう。
消費者調査によく使われる質的調査には、主に4つの種類があります。種類によって、メリットが異なります。それぞれの概要を確認し、どれが調査に最適かを判断しましょう。
現象または体験に共通する本質の理解を目的とした質的調査の一形式です。簡単に言えば、共通する体験について調べることでグループがどのように考えているかを把握します。ある体験がグループにとってどのような意味を持つかを知りたいときに実施します。
現象学的調査では、「______を体験してどのように感じましたか」という質問をします。それにより、さまざまな視点を理解することができます。
グラウンデッド・セオリーでは、データを集めて分析し、現れたパターンから理論(セオリー)を構築します。これは、先に仮説を立てるのではなく、集めたデータから理論を引き出すという帰納的なアプローチです。分析とデータ収集が並行して行われる反復的なプロセスです。
グラウンデッド・セオリーは、社会的プロセスや、グループの力学や行動を調べたいときに使用します。
行動観察調査では、グループの自然な行動や文化、伝統について調べます。調査者は、観察調査より一歩踏み込み、自然な生活環境で対象者たちに混じって暮らします。行動観察調査では、対象者の日常生活を実際に体験することで、詳細なインサイトが得られます。
行動観察調査は、人々の意識や振る舞いを深く理解するのに役立ちます。
史実調査では、文書、手紙、日記といった一次資料を使って過去の出来事について調べます。一次資料から情報を集め、歴史的文脈に照らし合わせて解釈することで、現在の出来事を理解します。このような調査は、未来の出来事を予測する上で役立ちます。史実調査では、チームでデータを分析して共通のテーマやパターンを特定します。
史実調査では、過去の重要な出来事や人、文化を理解するために古いデータを掘り下げます。
以上の4つが質的調査の主な種類ですが、ナラティブ調査など、他にも種類はあります。市場調査で目標に沿った結果を得るためには、適切な調査方法を見つけることが大切です。
質的調査は、特定のグループに固有の視点や意見、行動、体験を明確に理解することを目的とします。インタビューやフォーカスグループ、アンケートなどの手法を通じてテーマに関する描写的なフィードバックを集めるため、データを数値化することはできません。
質的調査では、プライマリー リサーチ データを収集しますが、最終的なレポートを作成する前にセカンダリーリサーチも加えて行うことを検討しましょう。元の調査データに、既存の質的調査のデータを組み込めば、説得力のあるストーリーを語ることができます。
量的調査では、選択回答形式の質問を使って標本グループから数値化可能なデータを集めます。量的調査の目的は、標本グループに関する仮説をテストすることです。選択回答形式の質問で構成したアンケートや実験、投票、テストなどを実施して数値データを収集します。
質的調査 | 量的調査 | |
目的 | 人の行動や体験、意識を理解する | データを数量化し、パターンやトレンド、関係を特定する |
データの種類 | 数値でない(言葉、観察、画像など) | 数値(数字、パーセンテージ、測定値など) |
データの収集方法 | インタビュー、フォーカスグループ、行動観察、ケーススタディ、観察、アンケートなど | アンケート、実験、テスト、投票など |
標本サイズ | 小規模、非ランダム、特定のグループが対象 | 大規模、ランダム、幅広い層を含む |
調査に使う質問 | 自由回答形式(「Xについてどう思いますか」など) | 選択回答形式(「XとYのどちらが好きですか」など) |
関連トピック: 質的調査と量的調査: それぞれの違い・例・選択基準
質的調査を選ぶ場合の長所と短所は何でしょうか。どの方法にも良い面と悪い面があるので、ここで質的調査の長所と短所を見てみましょう。
どの調査方法を使用する場合でも、目標と照らし合わせ、質的調査がニーズに合っているかどうかを確認する必要があります。質的調査は、乗り越えなければならない課題がいくつかあるものの、消費者の行動を把握する上で極めて効果的な方法です。
この記事で解説したステップに従って質的調査を行えば、製品の開発やイベントの企画、顧客体験の改善に必要なデータが得られます。目標を設定すること、仮説を立てること、ニーズに合った手法を選択すること、データを分析すること、結果をレポートすることが大切です。
質的調査の中でも、アンケートは、価値あるフィードバックを大規模に収集できる効果的な方法となっています。SurveyMonkeyのシームレスな質的調査プロセスで、使用実態に関する必要なインサイトを得ましょう。
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