市場調査とは: 定義・種類・実施方法

新たな市場への参入や顧客満足度の改善、新製品の開発に役立つ市場調査の実施方法を解説します。

アンケートボックス

市場調査では、顧客やトレンド、競合他社に関するデータを集め、そこから包括的なインサイトを引き出すことができます。市場調査を通じて正確なデータを得れば、新たな市場に参入し、顧客満足度を向上させ、確信を持って新製品を開発することができます。

これは、新たに発売される消費者向け製品の70%以上が失敗に終わっていることからも、特に重要と考えられます。早い段階で市場調査を行えば、顧客のニーズに合ったビジネス戦略を立てて失敗のリスクを大幅に減らし、成功を最大化することができます。

ビジネスの成功は、効果的な市場調査から始まります。

市場調査は、消費者の行動や嗜好、カテゴリーのトレンド、競合他社などに関する情報を収集するプロセスです。

多くの組織が、市場調査の結果を製品開発やGTM戦略に役立て、ビジネスの成長につなげています。市場調査の結果からは、顧客のニーズを満たし、収益を拡大し、新製品を発売するための道筋が見えてきます。

市場調査を一枚岩のように考えるのは間違いです。実際の市場調査は、複数の種類の調査を含む幅広い概念であり、確実なビジネス判断につながるさまざまなデータや裏付けとなるエビデンスの入手に役立ちます。

  • プライマリーリサーチ(一次調査)では、具体的な問いに答えるために自分でデータを収集します。
  • セカンダリーリサーチ(二次調査)では、他の人が実施して発表したデータを分析することで、自分の問いに対する答えを見つけます。

この2種類の市場調査、調査方法、それぞれの用途を理解すれば、ビジネス上の問いに効果的に答えるための市場調査が設計できます。

プライマリーリサーチは、調べたいことに関するデータがすでに発表されているとは考えにくい場合に有効です。自社の製品・サービスを評価したい場合などがそれに該当します。

市場調査には、次のような方法を使います。

  • アンケートは、標準化した質問を尋ねて大勢の回答者から量的データを集める方法です。顧客の嗜好や購買行動、満足度、市場の需要などを把握するのに役立ちます。アンケートに自由回答形式の質問を含めれば、質的データを収集することもできます。
  • インタビューは、1対1の対話の中で顧客の動機や認識、意思決定プロセスに関するインサイトを得る方法です。一人ひとりに詳しく質問することで、グループでは言及されないような複雑な話題を掘り下げることができます。
  • フォーカスグループは、ターゲット層から選んだ少人数のグループに、進行役の案内に従ってディスカッションをしてもらい、ビジネスアイデア・製品・サービス・マーケティング戦略に対するターゲット層の考えや意見、反応を調べます。
  • オンライン市場調査では、顧客の行動や市場トレンド、競合他社の位置付けに関するデータをリアルタイムで収集します。Webサイト分析、ソーシャルリスニング、市場調査アンケートといった方法があります。
  • 製品テストでは、管理した状況下、または実際の状況で潜在的な顧客に製品を使用してもらいます。製品テストにより、ユーザビリティの問題の特定、顧客満足度の測定、製品の微調整などを本格的な発売の前に行うことが可能になります。

セカンダリーリサーチは、すでに調査が行われているトピックについて大まかに調べたい場合に便利です。調査対象となる問いが幅広いものであれば、すでに調査結果が発表されている可能性が高いです。

セカンダリーリサーチで市場調査を行う方法には、次のようなものがあります。

  • 業界レポートは、調査会社や業界団体、コンサルティング会社などが作成したもので、市場規模や成長トレンド、キープレーヤー、今後の展望に関する詳しいインサイトが得られます。企業はこれらのレポートを読むことで、自社のパフォーマンスのベンチマーキング、新たな機会の特定、情報に基づいた戦略的判断ができるようになります。
  • 競合分析では、直接・間接競合の状況を体系的に評価し、競合企業の強みと弱みを理解します。この分析により、市場のギャップを特定し、より効果的に差別化して、競合他社の動向を予測することが可能になります。
  • 政府刊行物には、経済指標、人口統計、取引データ、規制情報などがあります。政府刊行物は、大部分が無料で提供される上、市場に関する仮説の検証や、法的基準と業界標準への準拠に役立つ信頼性の高いリソースです。

市場調査は、見通しや丁寧な計画を必要とする繊細なプロセスです。調査を綿密に計画することで、有効なイニシアチブに着手し、インサイトを集め、データを組織の強化に向けた実行可能なステップに変換する準備が整います。

市場調査を実施するには、次のような手順に従います。

調査課題とそれに合わせて設定する目的によって、調査の焦点が絞られ、データ収集から分析手法までのあらゆるものが定義されることになります。

ビジネス上の問いとは、解決したい問題とそれがビジネスのどの状況に当てはまるかを簡単に要約したもので、ビジネス目標に直結する大まかな目標または課題です。 例として、「なぜ売上が落ちているのか」などが挙げられます。

調査目標は、調査を通じて突き止めたい具体的な事実または指標です。たとえば、「ブランド認知を測定してそれが売上に与える影響を理解する」といった目標を設定します。

調査目標は、後で具体的なアンケート質問に変換するものであるため、関連性の高い効果的な目標を設定することが大切です。ビジネス上の問いと調査目標の例をいくつかご紹介しましょう。

ビジネス上の問い調査目標
消費者行動: 当社では、動画ストリーミングサービス会社への投資を検討しています。賢い投資ができるよう、業界をめぐる現況や認識を理解したいと考えています。• ミレニアル世代に最も人気のあるテック企業やアプリを特定する。
• 使用しているアプリの数や満足度について証拠を集める。
• ストリーミングサービスに対するミレニアル世代の意識や使用状況を理解する。
広告テスト: 当社は、新製品のドッグフードの市場での発売を目の前に控えています。デザイナーから、印刷広告用として説得力のあるデザインが何種類か提案されました。どれを採用すべきか、どのように決めればよいでしょうか。• 各広告デザインのアピール度や消費者の好みを比較する。
• 消費者の購買意欲が刺激されるデザインを特定する。
• 消費者のデモグラフィック属性による違いを調べる。
ブランドの追跡: 当社は、炭酸水の商品カテゴリーにおいて確立されたブランドですが、過去1年間に多数の新規ブランドが市場に参入してきました。当社はこれをどのように捉えるべきでしょうか。• カテゴリー内のすべての主要ブランドについてブランド認知度を測定する。
• 各ブランドのイメージや連想を調べる。
• 自社ブランドと新規参入者のブランドの導入状況を理解する。

市場調査を実施する前にターゲット層を特定すれば、関連性の高い正確なデータを集めて、アプローチを調整し、リソースを最適化して、効果的な戦略を立てることができます。

そのためには、デモグラフィック属性や雇用状況、企業情報、購買習慣、行動属性など、ターゲット層の詳細を把握する必要があります。

ターゲット層に加えて、スコープを特定したい場合もあるでしょう。潜在的な市場を探している場合は、幅広い層を対象に探索的な調査を実施します。また、消費者の嗜好を理解したい場合は、対象者を絞り込みます。

目的が何かによって、ターゲット層にリーチする方法も変わってきます。確実な方法には、次の2つがあります。

  1. 既存の連絡先を活用する。顧客やWebサイトの訪問者、ニュースレターの購読者、SNSのフォロワーなどの連絡先を利用します。既存の連絡先を対象にアンケートを実施する場合は、メールで送信するSNSに投稿する、マーケティングアンケートWebサイトに埋め込む、WebリンクまたはQRコードをレシートに追加する、などの方法があります。
  2. 既存のターゲティングオプションから選ぶ。SurveyMonkey Audienceなどのツールを使用すると、高度なターゲティングオプションを使って3億3,500万人以上の回答者の中から適切な対象者を選ぶことができます。

市場調査を設計・実施する際に重要なのが、調査方法の選択です。質的調査と量的調査のどちらを実施するか、あるいは両方を実施するかの選択は、結果の詳細度や信頼性、適用可能性などに直接影響するため、プロジェクトの成功を左右するものと言えます。

どの方法が適切かは、調査の目標によって決まります。

  • 質的調査方法(インタビュー、フォーカスグループなど)は、既存の顧客の動機や意識を調べたいときに効果的です。
  • 量的調査方法(アンケート、Webサイト分析など)は、行動や嗜好、トレンドなどを大規模に測定したいときに使用すれば、統計的に意味のある構造化データが得られます。
  • 使えるリソースや求めているインサイトによっては、セカンダリーデータ分析も有効です。

多くの場合、主要な方法の中に調査の目標に最適なものが1~2つ見つかりますが、あらゆるニーズを満足させるアプローチはないことを覚えておきましょう。

アンケートの後で詳しいインタビューを行うなど、複数の方法を組み合わせると、市場をきめ細かく、バランスよく理解することができます。各方法が持つ異なる長所をうまく組み合わせることで、結果の検証や実用的なインサイトの発見、エビデンスに基づいた強固な戦略の構築が可能になります。

市場調査は、データを集めて終わり、ではありません。データを分析するために体系的にデータを検討・解釈し、意思決定に役立つパターンやトレンド、インサイトを見つける必要があります。

データの分析を始める前には、(タイムゾーンやデモグラフィック属性の違いなどを原因とする)偏った結果が出ないように、クリーンなデータセットを用意します。そのためには、質の低い回答を削除し、すべての回答が揃うまで待ちます。また、標本が母集団を正確に代表していることも重要です。標本が正確に母集団を代表していない場合は、結果に重みを付けることでバランスを調整します。

複数の回答者グループまたはアンケート実施回をまたいで結果を比較する場合は、結論を出す前に差が統計的に有意であることを確認する必要があります。 

統計的有意性とは、あるグループの回答が別のグループの回答と実質的に異なるかどうかを示す統計的検定です。標本グループ間の差が統計的に有意な場合、その結果は、標本に不規則に現れたばらつきではなく、母集団の真の特性を反映したものと判断できます。 

一般に推奨される方法は、2つの推定値の信頼区間に重なりがあるかどうかを確認する方法です。信頼区間が重なっていない場合は、統計的に有意な差と考えられます。 

信頼区間は、推定値に許容誤差を加えるか、推定値から許容誤差を引いて算出します。許容誤差を求めるには、許容誤差計算ツールを使うか、以下の表を参照します。一般に、標本が大きくなると許容誤差は小さくなります。

標本サイズ許容誤差(信頼水準が95%の場合)
50+/- 14%
100+/- 10%
150+/- 8%
250+/- 6%
400+/- 5%
600+/- 4%
1,100+/- 3%
2,500人+/- 2%

たとえば、400人を対象にアンケートを実施した結果、ブランド認知の推定値が男性で45%、女性で60%だったとします。許容誤差が±5パーセントポイントとすると、信頼区間は男性で40~50%、女性で55~65%となります。2つの信頼区間の間に重なりがないため、男性と女性の間に見られる差は、統計的に有意と考えられます。 

月に1回、四半期に1回など、定期的に長期にわたってアンケートを実施すれば、顧客の行動やブランドイメージ、市場力学などの変化を追跡し、ベンチマークを設定することができます。その際、毎回同じ基準と手法を使用することが重要です。変えるのは実施日だけです。

統計手法を厳密に使用してトレンドを長期的に分析すれば、信頼性の高いインサイトを得て、エビデンスに基づいた賢い意思決定につなげることができます。

市場調査の結果を手にしたときに目にするのは、標本全体の回答を集約したものです。分析に必要なインサイトを得るためには、母集団の各セグメントが市場調査にどのように回答したかを見る必要があります。

たとえば、次のような標本セグメントに注目します。

  • デモグラフィックセグメント: 性別、年齢層など。
  • 地理的セグメント: 国、地方、都道府県など。
  • 行動セグメント: 頻繁に購入するカテゴリー、割引の利用頻度など。

さらに、より深いインサイトを得るために結果をセグメント化する方法が2つあります。

  • 結果をフィルタリングして特定のセグメントの回答を確認する。
  • 他のセグメントと、またはデータ全体と比較して意味のある差を見出す。

たとえば、炭酸水のブランド認知度アンケートでは、男性より女性の間で認知度が一貫して高いという結果が出ました。男女間の差は、シュウェップスなどのブランドでは比較的小さいですが、ラクロワやバブリーで特に大きくなっています。

データをセグメント化するときは、各セグメントの規模に注意する必要があります。たとえば、回答者総数が300人の場合、都道府県でセグメント化すると、各セグメントの回答者数がほんの数人になってしまうため、意味のある確かな結論を出すことができません。

関係者に強い印象を与え、関心を引くための最適な方法は、データの中に明確で論理的なストーリーを見出すことです。

分析結果や推奨事項を提示する前に、ストーリーを提示して、関係者に文脈を理解してもらうことが大切です。プレゼンテーションのアウトラインを作成するときは、SCQAなどのストーリーテリングフレームワークが役に立ちます。

SCQAとは、状況(Situation)、問題(Complication)、問い(Question)、答え(Answer)の頭文字です。

  • 状況: ビジネスの現在の状況と既知の事実。
  • 問題: 調査の必要性につながる中心的問題。
  • 問い: 調査の対象となる具体的な問いと、それに答えるためのアプローチ。
  • 答え: ビジネス上の問いに答え、行動の指針となる重要なインサイト。
SCQAの骨組み(状況、問題、問い、答え)を示すピラミッド図

ストーリーに加えて、関係者が把握しやすい具体的なデータとして、ビジネス事例を裏付ける数値データも用意します。

主張を大きな数字で裏付けてくれる統計があれば、その力を借りましょう。50%を超える値なら、「過半数」と言うことができるからです。 

ストーリーを裏付けるデータが、印象的な値でない場合は、別の表現に言い換えます。 

たとえば、「自動運転車に乗るのは安全だと感じている人は10%」を「安全だと感じていない人は90%」と表現します。ただし、構造化された分析の場合(スコアカードを作成する場合など)は、言い換えができません。

主張の裏付けとしては、データの視覚化も有効です。

SurveyMonkeyの調査によれば、42%の人が、チャートやグラフ、インフォグラフィックなどで視覚化されたデータの方が文章や表で示されたデータより見やすいと答えています。

ここで、最も一般的なグラフのタイプと用途をご紹介します。

アンケートデータの分析に適したグラフタイプを選択する

データを収集し、数値を分析して、実用的な計画を立てたら、次は結果を関係者に提示します。推奨事項に賛同してもらうことや、他の人たちの行動を喚起することは、簡単ではありません。 

関係者を味方につけるには、会社のビジネス戦略に沿った現実的な推奨事項を提案しなければなりません。ビジネスの推奨事項は、以下のSMARTフレームワークに合わせて調整できます。

  • 具体的(Specific): あいまいな推奨事項だと、関係者に実行してもらえない可能性があります。実行可能な手順を具体的に示した推奨事項を作成しましょう。
  • 測定可能(Measurable): 推奨事項を、数量化できるビジネス成果と結びつけるか、推奨事項の実施がビジネスにもたらす効果を予測します。推奨事項には、たとえそれが仮説に基づく場合でも指標を含めるようにすると、経営陣の説得に役立ちます。
  • 達成可能(Attainable:): 推奨事項が非現実的だと、関係者の意欲がそがれてしまいます。推奨事項で目標が高く設定されている場合や、用意できる以上のリソースが必要になる場合は、達成するために何が必要になるのかを概説します。 
  • 関連性(Relevant): もう一度簡単に調査に触れることから始めましょう。推奨事項が当初のビジネス上の問いに由来していること、インサイトに裏付けられていることを説明します。また、推奨事項の内容が提示する相手に合っていることが大切です(マーケティングチームにはマーケティングの推奨事項を提示するなど)。 
  • 期限付き(Time-bound): 推奨事項に明確なタイムラインを設定します。アクションの開始時期、主要なマイルストーン、完了見込みの日付を指定します。タイムラインが決まっていると、緊急性や責任感が高まり、関係者が実施を効果的に計画・優先するようになります。

総じて、市場調査は、ビジネスをデータドリブンな未来へと導いてくれます。その好例が、サクラ・オブ・アメリカです。

サクラは、北米市場における製品開発やデザインのアプローチについて調べる際に、SurveyMonkeyの市場調査ソリューションを利用しました。日本を拠点とする同社は、それまでの市場調査の大半を日本市場で行っていました。

SurveyMonkeyは、ターゲット市場の市場規模や競合状況、製品の位置付けなどを含む詳細なインサイトと、顧客から直接得たフィードバックを提供しました。

サクラは、北米市場で有望な研究開発イニシアチブを新たに見出すことができました。

市場調査は、当て推量をなくします。顧客体験担当のエグゼクティブからマーケターまでの誰もが、市場調査を利用することで、データに裏付けられた確実な判断を下し、ビジネスを成功させることができます。

SurveyMonkeyがあれば、市場調査のプロである必要はありません。SurveyMonkeyは、包括的なサポートと、市場調査アンケートテンプレートを始めとするフルマネージド型の市場調査イニシアチブを提供しています。消費者行動アンケートを実施したい人も、企業命名規則をテストしたい人も、SurveyMonkeyのグローバルなアンケートパネルであるSurveyMonkey Audienceを利用したい人も、ぴったりのソリューションが見つかります。

Two marketing employees, one reviewing a paper with brand strategy, and the other holding a printout of charts

ブランド マーケティング マネージャー向けのこのツールキットは、ターゲット層の理解、ブランドの成長、ROIの測定をサポートします。

A man and woman looking at an article on their laptop, and writing information on sticky notes

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