「高等教育の修学支援新制度」は開始から3年目を迎えています。大規模な奨学金制度が始まったことは低所得世帯の進学促進の観点から意義があるものの、学生への厳しい成績要件や個人補助にもかかわらず機関要件を課しているなど、制度上の課題が見られます。また、新制度に係る事務処理上の負担が重くのしかかっており、通常の大学の業務に支障や負担が生じています。
 「大学等における修学の支援に関する法律」の附則において施行4年後の検討が定められているため、文部科学省の「高等教育の修学支援新制度の在り方検討会議」も8月から審議を開始していますが、中間所得者層への支援の拡充とともに、機関要件の厳格化への動きが見られます。特に定員充足率や財務に関する対象外要件の過度な規制強化は、私立大学への圧力になると同時に対象学生の限定につながりかねません。
 新制度においては、対象学生への支給額に差があり、国公私の格差が生じています。自民党内では、J-HECS制度の導入について継続して審議されており、今後の政策への影響が考えられます。コロナ禍による経済状況の悪化や少子化による学齢人口の減少も相まって、奨学金制度は様々な検討すべき課題を孕んでいます。
 そこで、本研究所では、新制度開始前の2019年11月に実施した「私立大学の財務及び高等教育政策に関するアンケート調査」に引き続いて、修学支援新制度を中心に私立大学の実情を把握し、高等教育の研究者による分析を行うことで、私立大学の発展に資する政策提言に繋げたいと考えています。アンケートに大学名の記載をいただきますが、個別名称は出さず、私学全体を客観的な視点から分析いたします。可能な範囲でご回答いただききたくお願い申し上げます。
 私立大学の外部環境が大きく変化する中で、私立大学が社会からの要請に応え、持続的発展を図るための岐路に来ていると言えます。本研究が、各私立大学の中長期戦略に有効なものとなるよう、調査・分析を進めたいと考えております。
 学務ご多忙の折に甚だ恐縮ではありますが、ご協力のほど、お願い申し上げます。
 
プロジェクトリーダー
小林 雅之(桜美林大学 教授/私学高等教育研究所 客員研究員)
浦田 広朗(桜美林大学 教授/私学高等教育研究所 研究員)
 
問い合わせ先
E-mail:riihe.project@riihe.jp

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