終了 JSEPTIC簡単アンケート第74弾:ARDS診療の実際 *は必須項目です 対象:医師 目的と概要 ARDSの診療では確固たるEvidenceがない部分も多く、臨床現場で医師のExperienceに頼らざるを得ない場面も多いと思います。そこで新生Intensivist誌ではExpertならどうするか?というExperienceにも焦点を当てた誌面を計画しています。その前提として、現在日本で行われているARDS診療の実際を読者の皆様にアンケート形式でお聞かせ願えれば幸いです。 東京都立広尾病院 救命救急センター 中島 幹男 <症例>高血圧の既往がある60歳の男性。1週間ほど前から咳嗽と発熱が出現し、食欲が落ちていた。来院当日から労作時の呼吸困難を自覚したため救急搬送された。タバコ: 1日20本(20〜50歳), 内服薬:アムロジピン 5mg来院時の所見:意識レベルGlasgow Coma Scale E4V4M6, 血圧 150/80mmHg, 脈拍 130/min, 呼吸回数 30回/min, 体温 38.5℃, SpO₂ 87%(10Lリザーバー)患者本人の呼吸困難の訴えや身体所見での呼吸努力はそれほど強くない。身長 165cm, 体重 65kg(理想体重 61.5kg)血液ガス分析:pH 7.38, PaO₂ 55mmHg, PaCO₂ 35mmHg, HCO₃- 22mEq/L胸部X線写真・胸部CTで両側下肺野背側を中心にびまん性のすりガラス陰影と浸潤影の混在を認めた。循環器内科医による心エコーの評価では左室収縮能などは問題なく、心不全は否定的との見解であった。喀痰培養は抗酸菌も含めて提出した。新型コロナウイルス、インフルエンザの迅速抗原は陰性であった。 Question Title * 質問1.あなたの専門は何ですか?(複数の専門を持つ場合は自身が現在一番勤務時間を割いている専門をお答えください) 1. 集中治療医 2. 麻酔科医 3. 救急医 4. 総合診療医 5. 内科系医師 6. 外科系医師 7. 初期研修医 8. その他(記載してください) Question Title * 質問2.現時点でベルリン定義に必要な酸素化の診断基準(≥PEEP/CPAP 5cmH2O)を満たさないがARDSと診断するか?(文献1参照) 1. 診断する 2. High flow nasal cannula(HFNC)であれば診断する 3. 人工呼吸器装着下でないと診断しない 4. 診断しない 5. 症例による フリーコメント(どのような症例で診断するかなど) Question Title * 質問3.急性呼吸不全の原因検索で気管支鏡(気管支肺胞洗浄)を実施するか? 1. 未挿管の現状でも実施する 2. 気管挿管・人工呼吸管理となったら実施する 3. 気管支鏡検査のために気管挿管・人工呼吸管理開始の閾値を下げる 4. 実施しない 5. 症例による フリーコメント(どのような症例で実施するかなど) Question Title * 質問4.本症例に現時点で全身ステロイドを使用するか? 1. 使用しない 2. ステロイドパルスよりは少ない用量で使用する 3. ステロイドパルスを行う 4. 症例による フリーコメント(どのような症例で使用するかなど) <症例の続き1>本人の呼吸困難と呼吸努力が出現したため、HFNCを導入した。流量 50L/min、FiO₂ 0.6で、SpO₂ 98%と保たれ、本人の症状や呼吸努力も軽減した。 Question Title * 質問5.この状態からさらに酸素化が悪化したり、呼吸困難や呼吸努力が出現した場合、呼吸管理をどうするか? 1. HFNCの流量やFIO2を上げて粘る 2. NPPV(CPAPモード) 3. NPPV(S/Tモード) 4. 気管挿管・人工呼吸管理 フリーコメント(HFNCやNPPVでできるだけ粘る症例はどのような症例か?) <症例の続き2>入院後呼吸状態の悪化があり、ICUに入室して、気管挿管・人工呼吸管理とした。人工呼吸器設定:PC-A/Cモード, Δ吸気圧 10cmH₂O, PEEP 10 cmH₂O, 呼吸回数 25回/分, FiO₂ 0.6実測値:1回換気量 400mL(6.5mL/理想体重kg), プラトー圧 20cmH₂O, 呼吸回数 25回/分, 自発呼吸なし(挿管時に筋弛緩薬を使用), SpO₂ 92%血液ガス分析:pH 7.30, PaO₂ 70mmHg, PaCO₂ 45mmHg, HCO- 22mEq/L Question Title * 質問6.本症例の人工呼吸器戦略について当てはまるものを選んでください(複数回答可) 1. 厳密な1回換気量制限のためにPressure control ventilationからVolume control ventilationに変更する 2. PEEPの設定にARDSnetのLow PEEP/FIO2 table(2)を使用する(文献2参照) 3. PEEPの設定にARDSnetのHigh PEEP/FIO2 table(2)を使用する(文献2参照) 4. 適切なPEEP設定のために食道内圧(経肺圧)を測定する 5. 適切なPEEP設定のためにElectrical Impedance Tomography(EIT)を使用する 6. 何れかの方法でリクルータビリティを評価する 7. 腹臥位療法を実施する フリーコメント(あなたの戦略について上記以外の選択肢や、どのような場合に上記選択肢を行うかなど) Question Title * 質問7.リクルータビリティーの評価についてお答えください。(複数回答可) 1. リクルータビリティーは評価しない(できない) 2. P/Vカーブを用いて評価する 3. R/I比を用いて評価する 4. EITを用いて評価する 5. CT撮影を行い評価する 6. その他の方法で評価する フリーコメント(その他の方法について具体的に記載してください) Question Title * 質問8.本症例にリクルートメント手技を行うとしたらどのような方法で行いますか? 1. 行わない 2. 行う(30cmH2Oで30秒間) 3. 行う(40cmH2Oで40秒間) 4. 行う(1分以上かけて段階的に圧をかけていく) 5. 行う(HamiltonシリーズのP/Vツールを用いる) 6. 行う(上記のいずれでもない方法) フリーコメント Question Title * 質問9.本症例に腹臥位療法を実施するとしたら、腹臥位への体位変換の際に合計何名のスタッフで実施しますか? 1. ≤3人 2. 4-5人 3. 6-7人 4. 8-9人 5. ≥10人 フリーコメント Question Title * 質問10.本症例に腹臥位療法を実施するとしたら、何時間連続で実施しますか?(あなたの施設で実施している・実施できる1日当たりの時間をお答えください。 1. 6時間以下 2. 6〜11時間 3. 12〜23時間 4. 24時間以上 その他時間数またはフリーコメント Question Title * 質問11.腹臥位療法を施行する場合は、筋弛緩薬の持続投与を併用しますか? 1. 必ずする 2. 大部分でする 3. 半々 4. あまりしない 5. ほぼ使用しない 6. 絶対に使用しない フリーコメント <症例の続き3>挿管時に使用した筋弛緩薬の効果が切れた頃(気管挿管から2時間後)、自発呼吸が出現した。先ほどと同じ人工呼吸器の設定で、以下の所見であった。実測値:1回換気量 600mL(9.8mL/理想体重kg), プラトー圧 20cmH₂O, 呼吸回数 30回/分, SpO₂ 92%, 気道閉塞下でのP₀.₁ 6cmH₂O血液ガス分析:pH 7.40, PaO₂ 70mmHg, PaCO₂ 35mmHg, HCO₃- 22mEq/L Question Title * 質問12.強い自発呼吸を何で判断しますか?(複数選択可) 1. 特に自発呼吸の強さについては気にしていない 2. 身体所見 3. P0.1 4. ΔPocc(呼気ポーズによる気道内圧の変化) 5. 吸気流量波形の形 6. 吸気開始時の気道内圧の陰圧 7. 食道内圧 フリーコメント(あなたの評価方法について上記以外の選択肢や、どのような場合に上記選択肢を行うかなど) Question Title * 質問13.強い自発呼吸が出現した時点での本症例の人工呼吸器戦略について当てはまるものを選んでください(複数回答可) 1. 特に介入はしない 2. 呼吸努力を減らすためにPEEPを上げる 3. 呼吸努力を減らすためにΔ吸気圧を上げる 4. 鎮静薬・鎮痛薬を増量する 5. 筋弛緩薬を持続で開始する(完全に自発呼吸を消すぐらいの用量) 6. 筋弛緩薬を持続で開始する(自発呼吸努力を弱めるぐらいの用量) 7. 筋弛緩薬を間欠的に投与する フリーコメント(あなたの戦略について上記以外の選択肢や、どのような場合に上記選択肢を行うかなど) <文献>1. ARDS Definition Task Force, Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, Ferguson ND, Caldwell E, et al. Acute respiratory distress syndrome: the Berlin Definition. JAMA. 2012 Jun;307(23):2526–33. 2. http://www.ardsnet.org/files/ventilator_protocol_2008-07.pdf. アンケートは以上です。ご協力ありがとうございました。 完了